「恋人たちは濡れた」


恋人たちは濡れた」をDVDで観た。恥ずかしながら神代辰巳の作品を、僕は初体験であったが、これはすごい。冒頭から最後まで、映画のフィルムリールとか、自転車とか自動車とか、動くものすべてが。廃船、ススキの原っぱ、雑木林、砂浜、海など、景色すべてが。最初に絡む絵沢萠子の声と態度が、おお、まさに昔のポルノ、的な、如何にもなベターッとした伏目がちで寄り添ってきて誘うような声と態度、と思いきや、続いて登場する中川梨絵の、ほとんど物みたいな、ただそこにいるだけみたいな佇まいがすごい。主人公の大江徹も、三波春夫、ギターも歌、朗々としていて、曇りなくて、性交シーンも含めて、まるで神話のようで、何もかもが、次から次へと、あらわれては消えていくのが、これはなんて贅沢なことか。こんなに良いものが、何の躊躇もなく、水のようにダラダラと流れ去ってしまって、あっという間に終わってしまった。なんだか勿体ないようだ。