木の実


先週から、右手中指の爪が、まるで爪切りで中途半端に切って途中でつながってぶらぶらとぶら下ったままみたいになっていて、どうも右手中指の爪は、そんな風に勝手に欠けてしまうのが妙に癖になってしまったようで、カルシウムが足りないのかビタミンがすなのかストレスなのか年齢なのか知らないけれども最近そういうことはわりかし定期的に起こるようで、実際そうなってしまうと無理に切り取ってしまう、のだけれども、いつもそれができればいいのだが、それをすると、なかなか痛そうな結果になるかもしれないケースもあって、今回はまさにそんな感じなので、仕方がないのでそのまま数日放置して、やや伸びてきたところを後日一気に切除するという作戦に出た。


で、それまでは絆創膏でカバーしておくのだが、手を洗ったり顔を洗ったりするわけだから、絆創膏だけだと全然ダメで、その上からコーティングしないと、ということで、薬局で指サックを買って嵌めておくのだ。これはまあ、しとけばOKなのだけれども、これだととにかく、延々ひたすら、ゴムの匂いと共に、一日を生活しなければいけなくなる。ゴムの匂い。ほんとうに、ゴム臭である。なぜここまで、と思うくらい、ゴム臭だ。わりとイライラする。


それで、細かいことを色々と気にし始める。指先からすっぽりとはめているけど、指先の方に、少し空気が溜まっているのだ。これが、気になるのだ。もっとぴったり、密閉状態にしたいと誰もが思うはずだ。ああーなんでここにちょっと空気が入ってー!とか、キレそうになる。でも完璧には無理。だから、仕方がないので、ゴムの先に針で孔を空けたくなるのだ。で、空ける。カッターの先で、空けました。ブツッとね。ついにやった。やってやった、という気持ちになる。でも、それでどうなったか?というと、別に何も変わらなかった。指先は相変わらず空気が入ってたし、穴が空いたからそこから涼しい空気がそよそよと入ってくることもなかった。ほんとうに、笑っちゃうくらい、何も変わらなかった。これにはちょっと驚いたが、まあそんなものなのかもしれない。


今日はけっこう人から聞かれた。会社で、それ何?指に、何はめてんの?聞かれるたびに、爪の状態を説明した。それだとわかってくれるが、でも、所詮他人事なのだろうから、そんなの、とっとと爪切りで取っちゃえばいいじゃん、とか、平気で言われる。だったら、お前が同じ状態になったとき、俺が爪切りで取ってやるよ、思い切り乱暴に、グチャッっと、熟した木の実を?ぐみたいに切り取ってやろうかと思うが、その心をぐっと押し隠して、和やかさを保持する。