カッコウ


カッコウが鳴いているとき、すでに鳴声が消えた後の時間があらわれている。音がまず空間を区切った。鳴っている時間と、鳴ってない時間が、対比のような関係になって、今という質感が、唐突なある厚みをもった何かとして地から図へ反転して、にもかかわらずそれは同時に鳴き声から取り残されているので、その場に落ち着くことができずに、ぴったりとはめこまれるべき何かを待っていた。何かが目に入って取れないので顔を顰めて何度も瞬きした。涙が流れた。耳だけが聴いていた。ぎっしりとしていた。一つか二つ、穴が空いたように鳴声が穿たれていた。