「湿原植生復元実験区」 -- Sengokuhara Marshland Restore --


小雨が降る中、僕はなぜか箱根湿生花園というところにいた。

で、園内をぐるりと一周して、30分くらいだろうか?大体見終わったのでそこを後にした。


しかし、なかなか印象的だったのが、ここの施設内にある「湿原植生復元実験区」というスペースだった。湿原に様々な種別があり、ここで行われている事は、かなり人為的な操作の結果であるらしい。詳しいことは、まあ今のところよくわからない。ここのページに書かれていることが、詳しいようだ↓
http://www.hakubutu.com/nature/MU_hakone.html


面白いと感じられたのは、「湿原植生復元実験区」を見学する場合、その区画をぐるりと取り囲むように渡されたスノコの上を歩いていくのだが、足の下は湿地であり、大変良い感じの、赤味がかった、濡れた土の、広大な海が広がっている予感であり、そこから自分の胸くらいまで高さに、多種多様な草が生い茂っており、それがかなり遠くの向こうまで続けて広がっていくので、自分を取り囲む空間の感覚がとても新鮮に感じられることだ。


その生い茂る草は、地面からある一定の高さで堆積しているようにも見える。ある一区画だけかなりの面積で大きく傾ぎ、変な方向を向いていたりして、それが、画面上で絵の具のストロークが、そこだけ大きく方向を変えているような印象を与えるようで、割とスリリングな感じに思え、結構目を離せない気持ちになってしまう。色彩が(緑というか、ややくすんでおり、茶色や赤色やカーキ色と調和している)大変きれいである。空はひどい曇天で、遠景の山々は、朦朧とした霧で霞んでいる。そのような中で歩きながら、全体的に、湿地に生い茂る草の物質感と色彩が、視線を動かすたびに、その都度、自分の視界に雪崩れ込んでくるような感覚を味わった。


ここでの感じは、歩きながら些細な感覚として、特に自覚される事も無く感じられていたのだと思うが、結局のところ「湿原植生復元実験区」から出た後に、今見ていたものや、今歩いて一周したこのひとときが「湿原植生復元実験区」の見学。と呼ばれる限られた何かであった事を、はじめて知ると同時に、そこでの感覚がすべて思い出されるような感じであった。その些細な気分の変化自体に、好ましさ、というか、満足感を感じることができるような体験である。