画廊に行くということ


よく小さなギャラリーとかに行くと、数人が内輪的な感じでずーっとしゃべっていて、まあある意味、雰囲気が悪い場所というのがある。


こういうのは、要するに新規でふらっと入ってきた人に対して、あんまりなんにも考えていないのだろうと思う。で、場合によってはその「考えてない」感じに、結構嫌な思いを感じさせられたりすることはある。まあしかしその、こちらに全く無頓着な感じという事自体が嫌な訳ではなく、というか無視してくれている事自体は、ありがたかったりするのだが、まあなんというか、特にギャラリーのように、絵の鑑賞が目的だったりすると、そういうおしゃべり声というのは、端的に邪魔であったりして、そういうのは困ったなーと感じるのだが、まあいいかーなどと思いながら、そそくさとその場を後にするような事になる。ギャラリーの、こういう雰囲気は結構嫌だし、びびる。素人にはお勧めできない。ってな感じで、まあボクも玄人ではないし、臆病者ですから、やっぱ嫌ですよ入りにくい感じってのは…。


只、じゃあ「すべてのギャラリーは初見の人や不慣れな人に配慮した、優しい環境作りをしよう」みたいな話か?と言ったら、それはそれで、また違和感を感じるのだ。例えばどんな人でも(美術にあんまり興味がないような人でも)入りやすくなってるとか、敷居が低くしてあるとか、鑑賞中に、親切に「ギャラリートーク」されるのも、ちょっと辛いし…ちょっと違うという…。


まあ本来ギャラリーというところは、イメージ通り結構入りにくいところであり、で、それで良いのだ。という事も確かに言えるのであろう。美術品とは、特に現代美術なんかだと、まあ生活必需品ではなく投資の対象でもなく骨董的なものでもなく、それを購入する事の意味を購入者が各自考えるような、ある意味相当「高度」な需要に基づいて召還される商品であるのだから、その購入環境というのも「蕩尽する覚悟を決めた」購入者に対して、もっとも居心地の良い場所であって然るべきなのだろうという事は、よくわかる。あの作品に金を出そう。あれを手に入れようと決め、ギャラリーで購入の手続きをする。自分がその作家を気に入り、その作家の作品を保有しているという事は、購入者の誇りであり、(その作家/美術全般に対する)自らの意思表示であり、大げさに言えば(作家の/美術の)未来に対する責任の引受けですらある。この矜持はかけがえの無いもので、その取引が与えてくれる喜びは、作品の魅力そのものを越えて膨らむだろう。村上隆の作品に大枚を叩いた海外のコレクターだって、たぶん同様の心境であるはずだ。


ただその一方でギャラリーという場所は、なにも購入にまで至らぬまでも、鑑賞者が作品と出会う意味において最高のコンディションが整っているべき場所であるのは言うまでもない。せこい言い方だが今のご時世、足使ってわざわざ観に来てるというのは、本来すごい事でしょ?最低限ちゃんと鑑賞させてくれるような配慮はあってしかるべきだ。当然の事!!…まあそれではどういうのが、最高のコンディションなのか?っつったら、やっぱり難しいのだが。


たとえば僕など、比較的混んだ美術館で誰かが作品を観ているとき、やむなくその前を通り抜けなければいけないときなどは、一礼してかなり姿勢を低くしてさっと視界から消えるように配慮するし、自分が相当長く作品の前に居るときは、やはりやや斜めのポジションに立ち、他の人の視界を遮らないようにするし、じっと作品に魅入っている人の邪魔をするのは、やはり良くないと思っている。二人で行っても会場に入ったら別行動するので会話もまずしない。まあでも、美術館は公共の場であるし、私営のギャラリーが美術館と同様の場になってはおかしいし、そもそも上記のそういう配慮はボクの単なる自己満足かもしれない。別にそんな細かい配慮いらねーよ。皆、そんなヤワじゃないよ。それぞれ勝手に、がしがしと必要なものを観てるんだ。っていうのも言えると思う。


これって本当に難しくて、ギャラリーに話を戻すが、たとえば初心者とか、一見さんに、そう簡単に、入ってこられちゃたまらんという、イヤーな雰囲気を醸し出しているのは、まあそれなりに重要なんですよ。もう全然配慮なしで、殺伐としてていいんだ。そこがいいんだ。そういうもんでしょ?という意見もありだよなーとも思うのだ。で、別に中の人は、不慣れな人に悪意とかがある訳ではないけど、でもだからといって、べたべた甘やかさない。誰かがたったひとりで一生懸命、作品観てるのに、後ろで海千山千なオヤジががーっと商談とか全力でどうでもいい雑談してるみたいな、そういう雰囲気ってのもそれはそれで「文化」(?)なのかもしれず、ある意味しゃきっと爽やかで良いのかもしれない。経験積めば、そういうがやがや猥雑と云いたくなる位の環境でも、びびっと良い物を見極められます!みたいな(笑)…。そういうスジの通ったところなら良いのかもしれないだろう。。そんなギャラリー、っていうか「鑑賞道」あるのかしらんけど。まあでも、やっぱコドモっぽいような場所は嫌なんで、それよりはオヤジの商談の方がマシか?…なんて!…まとまらない話になったが。。。