昼食


たまたま入った店でガラガラっと扉を開けたときの店内の空気とか客の雰囲気が予想と違い、その時点で入り口の店の名前をもう一度しげしげと見て、ああこりゃあ結構有名な店だ・・という事に気づいた。なんというか、ちょっと気後れというか気疲れするかもなあ。。と思いつつ、でもまあいいやと入店。ちなみにランチメニューとかがあるので値段は大した事ない。まあ普通に蕎麦だのラーメンだのよりは高いけどさほどでもない程度。


そういう「有名店」の接客とか雰囲気とかを見て改めて気付くけど、接客とかサービス的な要素なんていうのはむしろチェーン店やファミレスなんかの方が丁寧で均一されている訳で(というか接客とかサービスの輪郭を規定して意識したやり方しかありえないから)、それに較べるとこの店はまったく普通の食堂、という感じで、着席した僕に店主がばたばた近づいてきて「なんにします?」とせわしげに注文を聞いてさっさと厨房へ消える。店内は客でほぼ満席の状態で、店主以下働いてる従業員は皆、忙しさにかなりパニくっていて厨房と客席の間をばたばたと走り回っている。お店の雰囲気として、優雅さとか落ち着きとか高級感とかがすごい訳では全然なくて、どっちかっていうと庶民的な大衆食堂の感じが色濃い。しかし、まったりのんびりは出来ないような、なぜか気後れするくらいの緊張感だけはある。。他の客はオヤジ度が高く、というか、客とホスト役と若い女性みたいなビジネス会食・領収書系と、あと店主と雑談してるような常連的な層と、それら皆が昼飯を食うというのをいつもの通り実施しているという感じである。せわしなくバタバタとしていて、観光地でもあるまいし平日の昼間の食事どころが優雅な訳無いだろ、という感じ。


「ちゃんとしたお店」というのは結局小さな社会のようなもので、そこでのやり取りというのはすべてしがらみであり、約束であり、利害関係なのだろう。客と店の間でそのやり取りの濃度が濃いというか、厳しいというか…そういうのが如何にも老舗の有名店ならではという感じなのだ。というか、あの空気が漂ってる内は店のクオリティが保証されてるくらいのものかもしれない。。しかし「旨いもの」を楽しむなどというのはそう簡単なものではない。というか、本来食い物に旨いも不味いもないだろうと思う。それを旨い不味いと細かいこと云うのが、人間のややこしい社会であり文化とかいう事になるのかもしれないが…まあ、とりあえずさっさと食事を済ませてそそくさと会計して店を出た。