テレビ


正月とかにやってるテレビ番組の長尺ぶりは、本当にすごい。3時間とか5時間とか、ひとつのスタジオ内で、延々と何かをやっている。たとえば映画を観ているときの3時間というのは、どんな映画であれ、観続けるのは相当大変で、心身共にへとへとになってしまうような体験である事が多いが、テレビの3時間だと、ほんとうにあっという間だ。テレビのこの、密度の薄さはやはり驚くべき事だ。


さっきも、何となく見ていたテレビ番組がものすごかった。壁一面に、人の乗った箱がびっしりと貼りついていた。…つまり、縦3段、横1列くらいで、等間隔に箱がびっしり並んでいて、それらひとつひとつに、人間が2人か3人くらい整然と並んで座っていて、それら一人一人が、皆思い思いに身振り手振りをしたり喋ったりクイズに応えたりするのである。横長のビルのすべての窓から住人がまっすぐ顔を出してこっちを見ているような感じである。


で、それらの「箱」の一番左端のひとつだけが空席になっており、今から、その空席を埋めるための人選を行う、というのである。そして、いきなりその場全体は、そのまま放置されて、今度はその、「人選」のための、別の場所で撮影されている、やたらと大掛かりで空虚な出来事が、そのまま引き続き一時間以上続けられるのである。この一時間も、きわめて長く平坦な道で、見ているうちに自分がそもそも何を見ていたのか、ほぼ確実に忘れてしまうのだが、結果的にそれが終了して、その結果、ある人物がやってきて、何となく見覚えのある情景が映し出されたと思ったら、当初の空席だった「箱」が再びあらわれて、その人物が着席する。あ!そうか。この話は、ここでつながるのか!と思う。というかそもそも、この人はここに来てここに座るために、さっきまで一時間以上アレをやってたのか!というか、僕も要するにさっきまからずっとそれを見てたのか!!という事を思い出すというありさまで、こういう何の取っ掛かりも無く疲れや退屈すら生成されない流れ行く時間はある意味すごいと思った。