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パソコンやオーディオの裏側でスパゲッティ状に絡まりまくったまま埃に埋もれている色とりどりの配線というのは、あれはもう少しきっちりと整理してキレイに束ねておけないかといつも思うのだが、それなりに努力はするのだが、最終的には結局、ええい、もうこれ以上はムダだ。あとはいいや、みたいな気分になって完璧な状態の何歩も手前で放擲してしまう。あれを、きっちりと完璧にやる人も居るのだろうけど、僕には無理だ。というか僕の場合、一旦無理だと思うと、もう平気で平然とグシャグシャをそのまま見えない角度にある狭い領域とかに、まとめてみんな押し込もうとしたりもするので、そういういい加減なところは、如何にも僕という人物の特質をよくあらわしていると思う。。要するに僕は本来、そういう性格なので、見てみぬふりしろ、臭いものにはフタをしとけ、というタイプで、横着で怠惰で吝嗇な癖に人の顔色だけは大いに気にして調子が良くて軽薄という、まあそこまで言うと大げさだが、少なくともその正反対、ではない人なのである。


ところで先日、夕暮れの路上をぼんやり歩いていて、ふと頭上を見上げると、夕焼けにほんのり染まった空を背景に、無数に立ち並んだ電柱があり、上の方には無数の電線が、それぞれがそれぞれと、複雑に絡み合い交差しあいながらやたらと沢山、前後左右に張り巡らされているのが、やけに目につき、それらの電線の束ねられているところやゆるく捩れていくありさまなど、一本一本を丹念に目で確認しながら、これはしかしよく考えてみると、なんという丁寧で手抜きのない配線処理の結果であることだろう、と、生まれてはじめてといっても良い様な妙な視点で感心してしまった。だって良く考えてみると、これらの電線たちは、雨の日も雪の日も台風の日も、おおむね、ほぼまったく動じずに、しっかりとあるべき場所にしがみ付いているではないか。電線が切れるなんていうのはそうめったにある事じゃないだろう。しかしこれは、よく考えると、すごい事である。あの無数の黒い電線たちは、ただの一本も、手抜きされていないし、まあ大体でいいやと、適当な作業で放擲されてるようなのは、おそらく一本も無いのだ。全てがしっかりと、結び付けられ、コーティングされて、本来果たすべき役割をただひたすら実践しているのだ。それってちょっとすごすぎる。いくらなんでも完璧すぎるだろう。一日に一本か二本くらいは、はらりと地上に落ちてきてだらしなく垂れ下がってたりするのが、常識で考えて普通ではなかろうか?でも、そんな事はないのだ。すごい。でも電線の太くて黒い線はやっぱり見苦しいですね。