sakanaka


なんとなく考え事がしたくて、酒を飲みに行こうと思う。そして、思った店に入って、座席に坐って思ってた酒を注文して、それを無事に飲むことができて、そのようにしていながら、ただずっと考え事をしていたいと思うのだが、しかし実際は思いのほか、酒を飲むということだけに、集中してしまう。酒を飲む以外のことをなにもやらずにただ坐っているだけの自分を見出すだけである。これはばかばかしいので、なんとなくへらへらと笑い出したくなってしまうが、ひとりで笑っていると、気持ち悪いだろうから、そこは一応ちゃんとしているようにする。しかたがないので、液晶画面の中のsakanakaというアルファベット文字列をじっと見つめてみる。見れば見るほど、奇妙な文字の連なりに思えてくる。これが人の名前だというのだから傑作である。しかも何を隠そうこの僕を指し示すというのだから驚くじゃないですか。いやはや世の中は誠に奇妙だと思って実に愉快な気分でうわははと笑いそうになってかろうじてこらえて口元を隠しつつ忙しなく扇子をばたばたやって誤魔化す。