世相


7階から下を見下ろすと、傘を挿している人と挿してない人の割合が、大体半分半分で、これは降ってるのか降ってないのか判断が微妙で、でもまあ、とりあえず傘をもって外に出たが、実際外を歩いてみると、たしかに雨は降っていて、傘を挿す事が不自然ではないのだが、挿すと傘の表面に雨の手ごたえなどまったく感じられず、これじゃあ挿してても無駄だという気持ちがすぐ沸き起こるので、ただちに傘をたたむのだが、雨はさきほどから確かに物理的な降下を続けているのは間違いないので、それを皮膚に直接感じていると、やっぱり傘を挿すべきなのではないかという思いがまたぶり返してきて、なるほど高いところから俯瞰したときの傘使用率のざっくりとした印象は、決してバカにしたものでもなく、このような判断に苦しむ微妙な状況というものを思いのほかリアルにあらわすものなのだなあと感心した。