カレー


つまらない。書き直したい。でももう遅いし、実のところ、書き直すなんて、そんな気はさらさらない。


最近、夜になると眠くなってしまう。夜更かしな人間だったはずなのに、最近はそうじゃなくなってきて、ちょっと気を許すと寝てしまうのだ。


夏の終りの夜、の海。真っ暗な夜空と真っ黒な海の、防波堤沿いに漁船がたくさん連なって停泊していて、波が静かに打ち寄せる音と、木製の船体が波に揺られて、ぎしぎし、ぎしぎし、と軋むような音だけが聞こえてくる。


そうだった。あれはもう十年以上前のことで、で、当時ぼくはまだ、タバコを吸っていたのだった。適当な場所に腰をおろして、タバコに火を付けて、すーっと吸いこんで、ふーっと吐き出した。真っ暗な夜空に灰色の煙が吸い込まれていくのを見ていた。全神経が快感に打ち震えるような、好ましいとしか云い様のない、後ろめたいほど魅惑的な味わいが、口内から呼吸器を経由して脳内中枢を刺激する。うなだれて薄く目を開けたまま、ぼんやりと寛ぐ。蒸し暑い、夏の夜であった。塩の香りと波の音だけ部屋に戻れば、冷蔵庫の中には缶ビールがぎっしりと入っていて、それを思い浮かべるたびに、また嬉しかった。あるいは素麺のつゆがポットに入っていて、三束くらい茹でてそのつゆと生姜と刻んだネギでずるずるずるとかきこむように腹に収めて、その後はまた一服したものだ。たまたま録画したライブアンダーザスカイ1991年の録画したのを何度も再生させて聴いた。マーカスミラーの演奏。あれも夏の夜であるなあ。マーカスミラーなんてあまり好きじゃないけど、あの演奏だけは好きだの嫌いだのが言えない。


最初の30分は良くなかったですね。なんか、カッコつけてたっていうか、クールを気取ってましたよね。でも途中から良くなりました。良かったです。面白かったから良かったです。いや最初は良くなかったです。でもとちゅうからは良かったです。


それにしてもまあ、たぶん大きく外しましたよね。もっと無防備で、明るく社交的に、場合によっては、子供じみて甘ったれたような、だらしない態度で、そんな風に行ってさほど問題ないはずだという、そういう読みでしたよねえ。いや、そういうう思いこみがあったというのは、なんとなくわかります。でも現実を見ると、違いますよねえ。そうじゃなかったですよねえ。もう全然そんなレベルに達してないですよね。ほんのちょっとしたしぐさの変更ですら、受け入れてもらえなかったですよね。最初から、その程度の親睦でしか無かったって事ですよねえ。いままでの自己評価を、大幅に変更しなければならないことの悔しさとむなしさをかみしめて下さいね。実際、面接するのも疲れますよね。面接されてるのと一緒ですからね。一日中、志望者一人一人に、ずーっと審査されてるようなものですからね。


ところで、カレーのにおいがしますね。とりあえず降りてカレーにしましょうか。カレーね。そうだね。カレーってことで。