喫茶店


昨日もずっと呑んでて始発くらいの電車で家に帰ってきて朝方寝た。昼過ぎに起きて着替えて出かける。蒸した空気が空間を埋め尽くしている。蒸し鍋の中を歩くようだ。暑い。暑い・・・。汗が流れて流れて、全身が汗にまみれて、シャツの襟元や袖や裾が湿って重くなって下へ垂れ下がる。太陽に晒された髪の表面を手で触るとドライヤーをあてたばかりのように熱く熱をもっている。指の先の、生え際の頭皮は酷い汗で濡れている。ぐしゃぐしゃと頭を掻く。ハンカチで何度も顔や首筋を拭う。自分の中のエンジンを最小の弱火にして最小の駆動力だけでとぼとぼと歩く。とくに何も考えず。


図書館を出てから、駅前まで行く途中の喫茶店に寄った。この店は図書館に行った帰りに、たまに寄る店で、それほど頻繁に行くわけでもなくて、せいぜい一年か二年に一回か二回程度しか行かないが、しかしたぶん自分が知ってる喫茶店の中でもっともすごくいい店だと思う。坂中が認定する、喫茶店ナンバーワンの店である。ほんとうにすごくいい店だ。いいって行ってるワリには大して行ってない理由としては、まあ僕は、とくに必要がなければ喫茶店で時間を過ごしたいなどとは、ほとんど思わないということがある。まあ喉が渇いたなら、お茶よりは酒類の店に行きたがる傾向だし、喫茶店という場特有の、なんかある種の雰囲気とか趣味とか、インテリアとか食器とか、居心地のいい空間のどうのこうのとか、そういうのにあまり興味がないというか、基本どうでも良くて、夏なら涼しくてぐったり座ってはーっとため息ついてしばらくぽやーんとできれば、それ以上別に、何もいらないと思ってるからだが、そういう自分でも、さすがにこの店に行くと、店の良さというか、何か在り方のきれいさ、とでも言いたいような何かを感じさせらてしまう。何しろ、いつ行っても適度に混んでいて賑わっているところが、すごくいい。客はおそらくほとんど地元の人たちで、しかも結構年配のおじさんおばさんが多い。人々がそれぞればらばらに、思い思いに、まるで駅の待合室のように、それぞれの目的と行く先をもって、たまたまそこに小休止しているという事の、上品質な活気に満ちていて、まあなんて素敵な雰囲気だこと。と思う。やっぱり喫茶店には、一般紙でもスポーツ誌でも、各種新聞が何誌か揃って用意されてるのは基本だと思う。別に僕は読まないけど、カウンターでおっさんが新聞を読んでるとか、おばさんがべらべら喋ってるとか、ああ、喫茶店のあるべき姿だなあと思う。煙草の分煙とか(たぶん)してないところも良い。してるかもしれないけど。そうう感じがはっきりわかるようになってないところがいい。まあここは本当に、いい店だと思いますね。でもだからしょっちゅう行くのか?というと、さっきから何度も言うけど別に、そんなに頻繁に行きたいとおもってるわけではなくて。


夜七時ごろの空の青いこと。絵の具で再現させたくなるような色。用紙の上下左右余白五ミリ程度にマスキングして、中に平刷毛でオールオーバーに描く。何十枚か試したら、一枚くらい納得できるものができるかどうか。