SLOW DAYS


暑い日。ごろりと身体を横たえたまま一日中。ソファーに浅く座って本を開いて読書。あまり快適とは言えない気分のまま。胸焼けのような、胃のもたれのような、何だか説明のつかないような、妙な苛立ち。蜘蛛の巣にぶら下ってゆらゆらと揺れている一枚の蝉の羽根。太陽に炙られた空気がひたすら唸りをあげている。飽和点で弾けて拡散して周りに同化する。上空に溜まった湿気が壁面に細かい水滴をつくりところどころ水が流れ落ちて毛細血管の枝分かれのような模様になって視点を動かすと照明の反射がその模様をなめるように照らしながら動く。本を伏せて床に頬を付けてドアの向こう側を見つめている。午後が一定の速度で着実に過ぎていく。


加藤典洋「耳をふさいで、歌を聴く」の中からフィッシュマンズについての部分を読む。これはかなり素晴らしい。作品全部を徹底して聴いて、言葉を拾い、ひとつひとつを吟味していく。べつにそれほど目新しいことや新奇な内容が書かれている訳ではないのだと思うが、でも読み込みの丁寧さと実直さに説得され興奮させられる。フィッシュマンズについて、実は僕は大して知らなかったという思いで、自分が情けないような恥ずかしいようにさえ感じてしまった。とにかく歌詞の読み込みが素晴らしい。フィッシュマンズの歌って、こんなすごい詩だったかと思う。というか、自分はいままで何を聴いてたのかと。正直、いまさらだけど佐藤伸治の詩集を買わなければいけないような気がしてしまう。というか佐藤伸治という人物の激しく鮮烈な(何もないダラダラの、トロトロの、まさになんにもない)生涯を思うと、ほんとうに自分がつまらなくてなさけなくて心底嫌になりますわ。。