年始


妻の実家に新年の挨拶をしに行き、お酒などご馳走になってるとき、地震が来た。がたがたがたと音がして、元日からこれだと、地震は今後もまだ、今までどおり、たまには揺れるのだろう、そう思いながら、あたりを見回していた。「おーー、ずいぶん揺れているねえ。」「そうですね、震度4くらいですかねえ。」「たぶんそのくらいかねえ。」「ちょっとテレビつけてみてよ。」テレビで地震速報がやっている。「多摩東部は、ああ、震度4だねえ。」「震度4ですね。」「そうだね。4だね。」「4だって。」どのへんが震源なのか、聞いた事ないような場所が震源。「あ、そうか、ここは多摩東部ですか?」「そう、ここは多摩東部ですよ。」「4?やっぱり4か。関東地方じゃん。」多摩東部。Googleの地図で見ると、ここからであれば喜多見とか狛江なんかも、意外にずいぶん近いということがわかる。「これなら溝の口だって、そんなに遠いわけではないんじゃない?」「それは遠いよ。」「それは遠いか。それはいくらなんでも、近くはない。」自分がどの方角を見ているのかわからないが、上方に進むと大きな公園があるらしい。「ここ行った事ある?」「ある。」「これって大学?」「そうそう。」歩いて行く。駅の印象がずいぶん変わって、何もかも同じような駅前へと変わっていくのはどうなのだろうか。それでもまだ景気回復の役に立つのであればとも、画一的な発想からは何もうまれないとも語られる部分だが、バスに乗った場合は徒歩での進行方向とは逆側から向かうことになる。厳しい寒さだ。バス停からはいったん坂を上り、再び下る。まだずいぶん先である。「ずいぶん静かね。」「正月らしい。」散歩中の犬が飼い主の持つ散歩紐を引っぱって、道の外れに潜ろうとしている。玄関先に、日本の国旗が斜めに突き立っている。国旗の柄の部分は白黒の模様をしている。地図で国鉄(JR)の線路を示すときのような黒白だ。歩いていて、玄関先を通り過ぎようとするとき、真っ暗だった玄関先とガレージの一角に、ふいにパッと照明が自動で点灯して明るくなる。こういう仕掛けを設置している家が最近多くなったと思う。防犯上、そうしているのだろうが、はたして効果の程は。よそ見しながら歩いていたら、いきなり妻の実家の前に来ていた。「あれ?ここじゃん。もう着いたの?」「そうだよ、まだ道をおぼえてないの?今まで何回来てると思ってるのよ。」ぜんぜん気が付かなかった。松飾りが結わえ付けられている門を開けて中に入った。