生後一ヶ月


 実家に年始挨拶。妹夫婦の子供をはじめて見る。座布団を二枚並べたくらいの布団に寝かされた小さな生き物。抱き起こされて、こちらの部屋に連れてこられるところを後ろから見て、持ち上げられたそれが人間の大きさには見えず、まるででかいカツオとかサバのようなものを抱き抱えているように見える。頭ばかり大きくて、くるまれた毛布の下に身体全体があるのかよくわからない。上半身だけの生き物にも見える。腕に抱えられて、ゆらっと頭を後ろにのけぞらせる。目を開き、天井をじっと見ている。上の窓から太陽の光が差し込んでいて、冬の強い風が木々を揺らすので、光と風が壁の上の方にゆらゆらとした動きを映し続けているのを、ひたすらじっと見ているらしい。次に僕が抱かされて、ぐっと確かな重みが腕に掛かり、頭の重みを二の腕に受ける。そのまま身動きせずにいると、誰の腕の中でもお構いなしのようで、やはりそのままじっと上ばかり見ている。小さな手と足が毛布からはみ出す。まだ一度も地面を踏みしめたことのない足の裏は驚くほど柔らかくこれではまだ足の裏とは言えない。両足にぐーっと力を込めて僕の足の付け根あたりを蹴って、そのまま身体をまっすぐにして、石鹸のようなかすかに甘い清潔な匂いをふりまきながら、はあ、はあ、と小さく呼吸を繰り返しながら、どこかへ逃れようとしているのか、意外なほどのちからでぐいぐい蝦反ろうとする。