熱を測ったら、驚くほどの高熱だったので、なぜか、誇らしいような、晴れがましい気分になった。

検査したらインフルエンザではなくてただの風邪だった。AでもなくBでもなく、この部分に色が出てるってことは、インフルエンザ反応の可能性はほぼないって事です。とのこと。三分の一の確率で外れたということか。

熱にうかされたまま、家にいても、何をしようという気も起きず、とりあえずすぐ布団にはいって目をつぶると、そのまますーっと意識がうすくなって、はっと気付くと午後過ぎで、起きて適当に無理やり何か食べて薬をのんで、また横になると、いつの間にかふたたび意識をうしなって、もう一度、はっと気付くと、もう、窓の外はすでに真っ暗になっていた。

昨日の夜から今日までほぼ一日、ほとんど全部眠っていたようなものだった。横になり過ぎで、起きると背骨が軋むように痛んだ。

しかし、発熱で寝込むなんて、本当に生まれて始めてじゃないかと思うが、そんなわけないか。いや、もしかしたら子ども時代に培われた、体温計という器具への不信感のようなものが、そう感じさせるのではないか。温度計はこするとぐんぐん上昇したのに、体温計はなぜ上昇しなかったのか。当時、子供心に、体温計の結果をそんな浅知恵で操作できるなどと思うなよ。と言われたかのような、冷たいものを感じさせられたものだ。朝方、やや熱っぽい頬を触られて、ちょっと熱を測ろうかと言われて湧き上がってくる甘い期待感も、いざ結果が出れば、結局ガックリさせるような、失望させるような、なさけないような、ありふれた平熱の数値しか現れてはくれないという、そういう、とにかくいざという時に限ってぜんぜん頼りにならないもの。それが、何十年もしてから、このたびようやく、うまれてはじめて、体温計のお墨付きが出たということか。