ドアを開けて、次に来る人のためにわざと扉を大きく押し広げて、入口が大きく開いた状態のまま通り過ぎる。次の人も、ゆっくり閉まろうとするドアを手で止めて、さらに手で押し広げて、ドアが大きく開いた状態のままにして通り過ぎる。やがて、開いていたドアがゆっくりと動いて、あと少しで閉まろうとしている。あと少しで閉まる。そのとき、人が来た。ドアに近づいてきた。ドアを開けようとする。取っ手を握ろうとする。力を入れる。それと同時に、どーんと音がした。ドアが今、閉まった音である。鉄の鍵が掛かった状態である。その、施錠されて静止したドアの取っ手を取って、引いても動かないので、レバーを下に押し込んで、あらためて引く。内側からであれば、開くドアなのだ。そして、またドアが、開いた。あっさりと開く。腕力でぐっと引く。ドアが、大きく開いた。内部の棚はシンプル、というか質素なものだ。ちらっと後ろをみて、誰かが後から来るようなら、わざと大きく、ドアを開け広げた状態にして、そのまま立ち去る。次の人が閉まりかけるドアをキャッチして、また開いて、通り過ぎていく。次の人も、次の人も、通り過ぎていく。やがて、人が途絶えると、ようやくドアがゆっくりと閉じてきて、どーんと音がする。ドアが閉まった。このドアは、閉まっているとき以外は大抵開いているようだ。