渓流。水が、勢いよく流れている。ダムが放流されたので、かなり水かさが増して、流れも早い。川の音がうるさくて何も聴こえないほどだ。水の流れ。岩にあたって、水飛沫を上げて、泡立ち、白濁して、流れ去り、交わり、離れる。それが、手前から数十メートル先の向こう岸まで、水の束が無数に、絡まりあいながらめいめい勝手にのたうちまわるようにして流れていく。その数メートル上を、鷺の、白い絵の具のぼたっとこぼれたひとかたまりのような身体の滑空。観客席で、高速で走り抜けるものを見たような、羽根を広げたまま固定して、身体全体を凝固させたようにして、目の下の流れに自分をあわせるように、川から少しだけ上の空間を、水のスピードと一緒か、やや早いくらいで、音もなく、水のながれるかのように川下へ消え去っていくのを見送る。