ページ


本を持ったまま、眠ってしまった女性。眠りに入るにつれて、両手に持った本の位置もじょじょに下がり始め、やがて膝の上に置かれ、そのまま倒れて背表紙が下になり、開いたページが上になり、体全体が座席に対してずり落ちそうな感じになって、本も膝の上でやや斜めになったまま両頁全開で、まるで周囲の人々に今読んでる箇所を見てもらいたいような格好になって、そのまま身動きもせずに眠っていたが、しばらくして目を覚まして、膝の上でだらりと開いていた本はふたたび持ち上げられ、何事もなかったかのようにまた読書が再開されたのだが、やはりすぐ意識は薄れていき、目が塞がっていくので、またもや本の位置は下がり始め、膝の上に落ちて、また内容が周囲に開陳される。力を失った手の重みで、両翼を抑えられて目いっぱい開かれた本の、かろうじて指の下にあるページの橋が、もう少ししたら何枚かぱらぱらとめくれそうになっている。こうして何度かの上下運動がくり返されながら、短くても数日、長ければ数週間から数ヶ月かけて、ゆっくりと、少しずつ、ページが繰られていく。