行進は自由を作る


電車の座席が空いて、そこに座ると、まず前に座っていた人の体温がもうれつにシートに残っているので、いやだーなあーっと思うが、微妙に位置をすらしたりしながらやり過ごし、背凭れも前主の体温によって熱々のベタベタになってるのが冷めるまで、しばらくは背中を触れないようにして、さすがに神経質すぎるとは思うが、夏になるとそうなのだ。そういうものだ。端の席であれば、脇に合成樹脂製のついたてのような壁があり、そこも激しく人間のおびただしい油脂や皮膚から出る老廃物や目に見えない塵芥が付着していると思われ、自分を密着させたくなく、まさに着座した設置面および近接面のどの位置に対しても油断のならない厳しい環境といわざるを得ないが、それでも座りたいのだから、まったく今でも間違いなく絶望的なまでにこの電車は収容所へ向かっているなと思うが、今週はお盆weekなので電車は空いており、いつもこうだといいのに、と皆が思っている。