「Wild Thing」を演奏するJimi Hendrix


昔から、特に初期〜1968年頃までのジミヘンの映像が好きである。後期の深刻そうなジミを観てるより全然好きだ。ブラックプール公演とか、このへんの映像あたりを観てると、ジミ自身リラックスしてて楽しそうなのだが、嬉しそうな表情で真っ白な歯を見せて演奏しながら爆笑している表情を見てると、どことなく脳内の大事な制御結線がキレてるような、リミッタが外れてるような、本質的にヤバイ人のオーラが出ている気がする。。こういう、ギターを振り回して挙句の果てにぶっ壊すような振る舞いというのは、それ以降現われるロックギタリストの様式美みたいな「型」みたいな(つまり演奏者を外部から補強して守ってくれるようなつまらない)ものにまで使い回されていく訳だが、この頃は未だ全くの野蛮行為でしかなかっただろう。まるで着地点など考慮していない、ひどく台無しな、何とも形容し難い印象のステージであったろうと思われる。…まあ、本当にヤバイ瞬間というのは、こういう瞬間の事を云うのだろう。こういうのに居合わせてしまうというのは、幸福なのか不幸なのか…っていうか、多分、その場に居たら良いも悪いも感じられないだろうが。


そもそも「Wild Thing」という楽曲の、構造のあまりの単純さ、というか幼稚さには唖然とさせられる。トロッグスが67年に大ヒットさせた曲だが、ワイルドだぜ最高だぜとひたすら執拗に、ストロークに乗せてがなるだけと云って良い構成を持つ楽曲で、あれなら3分で誰でもギターで弾けるのではないか。ペラペラで軽薄な、吹けば飛ぶような凡庸なポップミュージックである。ちょっとだけスパイスを加えると、ニルバーナの「Smells Like Teen Spirit」になりそうだが、あの曲より「Wild Thing」の方が全然「ポップ」だしカッコいい。。ジミヘンのこういうのをカバーするセンスっていうのはもう、唯一無比のもので、軽薄なポップスをそのままに、得体の知れない化け物に変貌させてしまう手つきの鮮やかさと来たら本当にに素晴らしいと思う。(引用の仕方とかセンスで似たものを探すとすれば、これまた大衆消費材的側面を色濃く持つミュージカル曲を採用して、インド風サイケモード曲(?)にまで仕立ててしまう「My Favorite Things」のジョンコルトレーンもいる。)