「8月の濡れた砂」


八月の濡れた砂 [DVD]


うわーこれはキツイなぁと思いつつ、それでも何となくそれなりに面白がって最後まで観た。面白さがほぼ、当時の風景や風俗の感じとかあとはクルマとかそのへんくらいでしかないが。…ヨットで海に出てからのとかは結構いい感じだけど、しかし公開されたのが1971年(僕の生年と同じ)で、今となっては映画内のほとんどの要素が風化を間逃れていない感じに思った。(風化具合を面白がれる程の事もない)


とにかくクルマを海に沈めるとか断崖絶壁から飛び降りるとか赤ペンキで壁も床も塗りたくるとか、そういうのすべてがどうもあまり面白さや爽快さを感じさせてくれない。結局、ほぼ全部が、何かの鬱憤を晴らすような、見てる観客にそれを感じさせたいと思っているんだろうというような行為でしかない感じ。起こる出来事がそれ自体として自律してない感じ。


第一、クルマのシフトレバーが折れた事に何かを感じてしまって女とやる気を失くすとか(笑)いつまでも初体験の相手に拘っているけどなし崩しになるとか、とにかくこの登場人物たちの欲望は見ててがっくり来るくらい、かわいくてしょぼい。ヨットで船出するときもわざわざ大人にライフル銃突きつけたりとか、そこまでするか?と云いたくなるような大げささで、かといって笑えるわけでもないし、まあいいやと思いつつ半分シャレで見ている感じ。あと出てくる女性たちも時代に風化してしまうような美しさでしかないのだよなあ。。途中で死んじゃう女のミニスカのエロさだけは、当時の男の欲望視線を追体験できる意味で、ある種の複雑さを伴って心に残り興味深かったけど。


しかし「海水浴場」という場は今も昔も本当にダサイ場所だ。今の沖縄とかハワイとかも概ねああいう感じなのだろうか?見ていてこっちが恥ずかしくなる感じ。男も女も醜さが剥き出しである。まあそこが良いのか。あと、昔のスカイラインはやはりカッコいい。あと所謂「無軌道な若者の青春」として、文脈も何もない表層のファッション性とスピードとエロとバイオレンスだけで構成させたいのだけれど、でもあの当時まだ「生活」というか「家」の匂いも濃厚に漂わざるを得ない。という中間のところがあって、物語とは別の、そういう世界設定のイキたいけどイケないような気持ち悪い感じ自体は面白いのかもしれない。