I'm Diggin' You (Like an Old Soul Record)


ちょっと昨日書いたことには現時点で違和感も感じている。結局、あまり盛り上がってなさげなステージを観て、それで「客!もっと盛り上がれよ、手叩けよ」とか言ってるだけではないか。事もあろうにこの僕がなんでそんな事を言い出したのか?そっちの方が興味深い。。


ステージが盛り上がらないのは客のせいとかミュージシャンのとか、そういう誰のせいとかいう話ではない。それも出会いなのだ。だからそれでいいじゃん。僕がひとりで、昔はこうじゃなかったとか言って、何か妙にビビッてるだけの話なのかもしれない。ステージがどうだろうが、ミュージシャンは演奏するし、客だって来たければ来るよ。それが現実だ。それを「こんな状況は間違ってるよね、何とかしたいよね」とか何とか主張してるするヤツだけがいつの時代も痛い訳だが、昨日の自分はそういう感じかもしれない。


まあいいや。自分の思い出話の自分語りにしよう。だってここ、自分のブログだし(笑)…ミシェル・ンデゲオチェロのステージは過去も何度か観ていて、最初は2ndの「Peace Beyond Passion」リリース時の96年あたりで、このときも来日してるんだと知るや否や、急に思い立って一人で観にいったのだった。この時期はパチンコ地獄な日々で、その日、escapeを打ち込んでてこれで格好つくかたちにもっていけたら今日は早仕舞いしてミシェルを観にいこうと思ってたら、その直後爆発して、その夜はミシェルを観に横浜まで行って、そのあと都心まで帰ってきて、その後も池袋で適当にグダグダ遊んで、それで朝が白々として、ビルの向こう側の空が絵の具の青みたいになって朝が来たのだけど、それで、何もかもがかなりむなしかったのだけど、でもそれでもその時点で前日の所持金に加えて10万円近い金が余分に財布に入っていて、だからやっぱりとても嬉しいような空虚感で、まあ、ほとんど夢のような夜であった。。で、それはともかくその前の晩のbayNKホールでのステージが、もう圧倒的に素晴らしいステージで、そのとき演奏中に近くに居たよくわからないお姉さんがニコニコしながら何かこっちに近づいてきて話しかけてきて、びびってシカトしてそのまま逃げ帰って来たりもした記憶も混ざり合いつつ、そのときの感触というのはいまだに、相当忘れがたいなにかとして自分の中に残ってる気がする。


…その後、2003年あたりだったか忘れたけど、青山bluenoteで「Cookie: The Anthropological Mixtape」リリースの前後の来日公演も観にいっていて、そのアルバムもそうだったけど、ステージも相当ヘビーな感じに(僕は)感じて、今までのあの艶やかさは無くなっちゃったなあ、あぁやっぱミシェルみたいな知性派って、どうしてもこういう観念的な方向にいっちゃうのだなあとも思ったのだった。ミシェルはもともと、前のアルバムで上手くいった感触を、次のアルバムでは平然と捨て去って、まったく新しい事にトライする事を全然躊躇しない感じの女性なのだろうと思われるが、それにしてもあれほど素晴らしかった初期の数枚の雰囲気からずいぶん遠くへ来てしまったなあと、やや寂しいような気分も感じたものだ。でも勿論このときは僕の生活の方が、96年とは全然変わっていて、そのとき僕はサラリーマンであり結婚もしていたのだ。音楽だってその時点より数年分積み重ねて、さまざまに聞き重ねてきているし、流行廃りもあったのだろうし、そんな中での新しいミシェルのサウンドとの出会いだったのだ。


おそらくその後、数年後にもう一度青山に来てるはずで、そのとき僕は行かなかったのだが噂によれば一曲も唄わずステージ全部インストで通したとかいう話もあって、まあ、なんという頑固でやりたいことしかやらない(やりたい事しかできない)人なんだろうと思って、ややあきれるような、でもやっぱり何かうれしいような心持になったような記憶もかすかに残ってる。


で、このたび、数年ぶりに観る事になったのだが、実は現時点で僕はまだミシェルの最新アルバムを聴いてない。「夢の男 」…去年に出たらしい。おそらくステージはそのアルバムからの曲が中心になるだろうと予想された。でももうその時までに聴く機会がない(iTunesStoreでは売ってない)。でもまあ、最新版以外は全部聴いてるし、個人的には一昨年かその前くらいの最新アルバム、と思ってた「Comfort Woman」が久々にかつての艶を取り戻したように思えた事も記憶にあって、結構楽しいステージになりそうだなあと期待してた。で、その日はそのままyoutubeとか検索してたら、「MeShell Ndegeocello」で検索すると予想を遥かに超えてすごくたくさん引っかかってきて、これがもう僕にとっては涙なくしては観れないような映像が目白押しで、これで深夜までずっとyoutube鑑賞会となってしまった。


…いやーでも本当に、今の時代のインターネットの世界ってのはすごいよ、昨日一晩で観た映像だけで、10年前なら時間と金と足を使ってほうぼう探し回って質の悪いVHSテープを高い金で買って家で観るみたいなそういう世界でしか触れられない映像だと思う。…まあそれはいい過ぎかもしれないが、別に何年か前のモントルージャズフェスの映像だったりアメリカのテレビ出演したときの映像だったり、という事だけどでも!それでも全然すごい。そんなのだって、ネットが無ければ、絶対見れない。相当気合入ってないとこういうのは見れない映像の筈である。昔なら。こういうのはほんとうにすごい、いや実際、ミシェル・ンデゲオチェロのステージの映像なんて、こんな簡単に観られること自体が僕にとっては超・革命的な話である。


という訳で結構youtubeでひとり盛り上がって、翌日は日中は初台のオペラシティーにいった。「F1 疾走するデザイン」展を観たのだ。予想よりも面白くはなかったがそのときの感想はまた後日書くけど、で、それを観終わってそのまま乃木坂に来て、ビルボードにご入場した。思ったよりよりもずいぶん小さい会場だが、結構ステージと客席が近くて、それら全体を覆い隠すように、というか、一階席に張り出すように、二階席や三階席やさらにその上があって、かつ我々の居る指定席もステージと手前の客席全体を見下ろすような感じになっていて、これはこれで酒呑みながらステージ観てんのは楽しいよなあとおもいながら開演を待った。青山もここも、おっさん向けのライブ会場というか、要するに座って酒とか呑みながらステージを観れるから若い人の集まるところ程元気なくて良いし疲れなくて良い、という情けない理由で、最近ライブといったらほとんどbluenote系列しか行ってないのだが、このビルボード東京ははじめて来たけど、青山よりさらにオヤジくさいというか、もう完全に呑み屋的にステージを観れる感じがある。もちろんステージ間近な席ならかなり近い位置で楽しめるが、我々が居た指定席なんかはそれとは隔離された感じもあり、それこそ料理や飲み物の追加注文とかも、演奏中でもかなり普通に可能である。(青山だと追加注文ってしにくい)なんかちょっと「熱いステージ」とは距離をとって眺めたい向きにはうってつけであろう。


…などと思いながらも、まあやっぱりどうにもスカした雰囲気が、ほんのいささかながら若干ながらケツの穴をカユクさせる部分もあるのはあるだが。まあでもそれはそれだ。なにしろここは乃木坂のミッドタウンという商業施設の中のお店なんだから、スノッブ臭いのなんて当たり前である。最近の商業施設とかの巨大なビルディングの建築とかって、大昔の子供の頃ならすごく憧れたような、キラキラとしたものが光り輝いているのが、さらに合わせ鏡に写っていて、もう止め処も無くキラキラさせてしまっている中を、長い長い一本のエスカレータで上昇していくと、行き着く先にはまたやたらと豪勢で大げさなキラキラの看板がすごい神殿みたいに見えてる。みたいな過剰極まりない感じが多いと思うけど、ミッドタウンもビルボードもまさにそんな感じ。ステージの後方は巨大なガラス張りになっており、東京の夜景が客席から全開で見える。その見せ方も如何にも自慢げというか、さあ喜べ!的というか、まるで結婚式場の披露宴のようである。


まだから、ミシェル・ンデゲオチェロほど「東京ミッドタウン」が似合わないミュージシャンもいないという事だ。。…というか、「東京ミッドタウン」が似合うミュージシャンって、その時点でほとんど人間失格に近いって感じだろうけど、それにしてもミシェルは似合わない。なんていうと、やっぱり前日の話みたいになってきてしまう。やれやれ、こういう文句とか愚痴とかって何も考えなくていいから書きやすいのだろう。似合わなかろうがなんだろうが、ミュージシャンは与えられた環境で演奏するしかないのだからねえ。