Porgy(I Love You, Porgy)


Waltz for Debby


今日、久々にビル・エヴァンスの「Waltz For Debby」より「Porgy(I Love You, Porgy)」を聴いた。なぜこれを聴きたくなったかというと、前日からの話の続きでもあるのだけど、この演奏に収録されている、けっこうものすごい勢いの聴衆たちの無駄話とか笑い声を聴き直して見たかったから。


「Waltz For Debby」といえばほとんどの人が「My Foolish Heart」や「Waltz For Debby」の演奏における筆舌に尽くし難い美しさに魅了されるだろう。僕ももちろんそうなのだが、しかしCDに追加収録された「Porgy(I Love You, Porgy)」も捨て難い魅力を湛えていると昔から感じていて、なんだかんだいっても「Porgy(I Love You, Porgy)」の再生回数が一番多いのかもしれない、という気もする。


しかし、この、これほど美しい演奏であるにもかかわらず、その演奏を聴いてるビレッジ・ヴァンガードのお客さんたちの雑談や笑い声の遠慮の無いことといったら!!本当にびっりする。今、あなた方の目の前で演奏してる白人がいったい誰なのか、わかってんの?!と、僕じゃなくても言いたくなるだろう。というか、60年代以降に栄えた日本のジャズ喫茶ならこんな騒ぎ方は考えられないのでは?…なんて、まあ実際は良く知らないのですけど噂によればちょっと真面目な店なら、ピアノのバラードを聴くなんて生唾を飲み込むだけでも躊躇されるくらいの緊張感だったとか言うし、単にLPレコードを再生してるだけなのに!!…このすさまじい落差はなんなのだろう。。


っていうか、そんな事を考えつつPorgy(I Love You, Porgy)」の演奏が終わりに近づくとき、突如聞こえてくるどこかのおばさんのけたたましい爆笑の声は、これはいつ聴いてもほんとうにものすごい。このおばさん、これだけで歴史に名を刻んだと言っても過言ではなかろう。たとえば王様とかお殿様の前で平然と放屁するとか、そういった類の歴史への残り方である。しっかりと録音されて名盤に収録されたんだから、まったくたいしたものだ。ほんとうに、ビル・エヴァンスのI Love You, Porgyっていったら、真っ先にこのおばさんの笑い声が頭に思い浮かぶくらいである。


というか、この喧騒の中でビル・エヴァンスは演奏してどんな気持ちだったのだろうか?不本意ではなかったのだろうか?あるいは、まあそんなもんだと思って、特に気にもしていないのだろうか?…ちょっとその辺は、当時のニューヨークのジャズクラブ周辺の雰囲気とかでもあるのだろうし、ビルエヴァンスの当時の認知度の問題でもあるのだろうし、よくわからないのだけれど、でもこれ、すごいアウェー感ものすごいのではないかなあとも思う。…とかいって、実は意外と真相はまったく正反対で、ビル・エバンス自体が、イメージに似合わずふざけたヤツで、実を言うと爆笑してるおばさんはほかならぬエヴァンス自身の仕草とか態度とか表情とかに反応して笑っているという可能性も、まったく無い事も無いのかもしれない。。まあくどいようだがその辺は当然僕にはわからなくて、想像をたくましくするしかないのだが。。まあでも、はっきりしてるのは、とても美しい価値ある音楽がはじめて空気中に放出される瞬間というのは、決して世界すべてがそれを祝福してる訳ではないという事だろう。そういうものなのだ。でもそれで、まったく問題ないのだよ、とエヴァンスが言ってるようにも感じる…とは全然思わないけど歯の浮くような寒い締めの言葉で結んでみた。。


それにしてもさっきの地震はわりと揺れた。