公園


高いビル群の谷間にあって、鬱蒼とした木々におおわれているので、公園全体が日当たり悪くて薄暗くて、じっとり湿った蒸し暑い空気に包まれていて、腰掛けることができそうな場所はほぼすべて、ホームレスと中東系の外国人とくたびれた背広姿の会社員がそれぞれ陣取っていて、自分が佇むことの出来る場所を見つけて確保するのにわりと苦労する。少し彷徨って、とりあえず花壇の柵がやや高くなったところに寄りかかって、あらためてあたりを見渡すと、すぐ目の前には砂場があって、その砂場はおそらく犬猫の糞防止のためだと思うが、全体が大げさなフェンスに囲われていて、そのフェンス越しの砂場の中に、若いお母さんと子供がふたりで無言で下を向いて遊んでいるのが見えていることに今気づいた。傍らに設置してあるゴミ箱はどれも、コンビニのビニール袋いっぱいのごみが、ぎゅうぎゅうに詰められたもので溢れかえっている。ある一角では、そのビニールが腑分けされて、まだ新しい感じのする内容物と共に周囲に散乱しており、傍らには夥しい量の空き缶が扁平に潰されて重ねられている。夕方の、湿気を含んだ、生暖かい風が吹いてくる。6月の…じゃなかった、今日から7月になったのだ。…風を受けながら、とりあえずビールを呑もうと思って、缶ビールのプルタブを引き上げてブシューといって親指に付着した泡をなめて、缶の穴を見ながらタブをぐっと元に押し下げて、そのまま缶を斜めにして中の液体を喉に流し込むと、いつものように大して旨くもない苦味まじりのあのビール味の絶望的なまでに退屈な酒の感触が口腔いっぱいに広がって軽くうんざりして、ただ体中にだるいなまめかしさが広がっていき、両足にゆっくりと脱力感が下りてくる。ばかばかしいのだ、あぁつまらないのだと、しきりに思う。体内の中腹から息苦しさと共にあがってくるゲップをぐふぇーっとリリースして、そのままぼやっと斜め上の木々の葉の積み重なった様相をじっと見て、そのまましばらく心臓発作で固まったかのごとく呼吸を止めて凝固してみる。