夜に浮かぶ犬の体躯


夜の公園を歩いていて、ふと気づいて横を見ると、数メートル脇の芝生の上を、白色や青色や緑色の電気で光る発光物をぶらさげた子犬が、暗闇の中でその白や青や緑をせわしく揺れ動かしながら、ちょこちょこと小走りに僕と併走してきて、そのまま僕を追い抜き、前方へと移動していった。まるで夜間着陸する航空自衛隊の飛行機を思わせた。後ろを振り返ると、かなり遠くの方に飼い主らしき人物の黒い影が見える。公園だからくさりをといてあげたのだろうけど、どこへいったかすぐわかるように、ああして発光物をつけてるんだろう。しかしああして発光体を付けられてると、犬という生き物も小さな四本の足で、ちゃんと地面からすこしだけ浮き上がって、その足だけで移動するんだなあというのがよくわかる。犬とは、決して、地べたに直接接地したまま、ずるずると移動している訳ではない。犬とは、一部の爬虫類とは違ってちゃんと四肢で体躯を地上からある一定の高さに固定・維持しているのだ。夜に、発光物を付けた犬の移動するありさまを見てると、その茶筒のような円筒形の小さな体躯が、ちゃんと地面から十センチか二十センチほど浮かび上がった状態で、その中空に維持されたまま移動していくのがよくわかった。そしてその体躯下面から、地面に向けて、サーチライトにように何本かの光を落としているのだ。