「ピカソ展」を観る


乃木坂の新美術館〜サントリー美術館を回って、今回の展覧会では特に新美術館に出品されてる方に立体作品が大変多く、これらがどれも大変素晴らしいものであった。


たとえば超有名な、自転車のサドルとハンドル部分を組み合わせた「牛の頭部」の作品があるが、あれなど思いつきのアイデアだけでしかないようにも思えるのに、「牛の頭部」といって思い浮かべられるイメージと、自転車のサドルなりハンドルなりという、また別の文脈で散々見慣れていて、そちらでしっかりと定着しているイメージとがあって、モノ二つを組み合わせてみたら、それらが単純に組み合わさるだけではなくて、二乗されてしまっているというか、ぶつけた結果、想像範囲内におけるちゃんとした整合になってないというか、とにかく単純な思いつきと操作だけで、最大限の異常事態を引き起こしていると思う。それでいて、ばかばかしくて思わず笑ってしまうような軽やかさも保持されている。


しかし、さすがに結構疲れた。。この作家がある意味、20世紀最強の巨匠であるというのが、なんだか途方にくれるような気分でもある。巨匠というか、ほとんどケモノじみているというか、組成が違うというか、ヨーロッパとラテンをベースに、いろんなエキスとか何かをグシャグシャにして、飽くことなくのべつまくなし吐き出しまくってるのを観ているかのような…ピカソって本当に僕らと同じ人間なのでしょうか?でも、インクでさらさらっと描いてる仕事とか、素描とか、エッチングとか、立体とかはもう、無条件に素晴らしいです。僕の体質というか消化能力だととりあえずそういう感じか。…とはいえ、なんだかんだ言っても、あのゴリゴリに削りだしてゆくような感触は相当良くて、特に4〜50年代に作られたものは総じて素晴らしいように思った。