Hi-Fi


新しいスーツを買う。昔みたいにやたら高価なものなど今の自分は全く興味無しなので、安くて無難なやつ。入店して5分で決める。安かったのでほかの店で靴も買う。そしたらそれも40%引とかだったので安かった。


そのあとはじめて甘味屋の「みはし」に行った。妻はなんとかあんみつ、僕はところてんをいただく。シンプルでうまい。コンビニとかスーパーのところてんはちょっとツユの味付けに色々考えすぎだと思う。ところてんなんか、超カンタンで適当な方がうまいと思う。


そのあと、ツタヤに行ってking tubbysプロデュースの70年代前半に録られた古いレゲエ集と、Joeの「Ain't Nothin' Like Me」と、Grateful Deadの「Live Dead」を借りる。レゲエ集はCornell Campbellが3曲収録されていたので借りた。Joeは、僕は元々ベタベタなブラコンとかR&Bも好きなので、最近聴かないけどたまにこういう甘々のも聴きたくなるのだ。(今日は「みはし」に行ったからか?)本当はKeith Sweatの新しいのを聴きたかったのだが、無かったのでJoe。Grateful Deadは、大昔(サイケデリックと呼ばれていた音楽を全て聴きたいと思っていた時代)にずいぶん何度も聴いたのだがDark Starが突然無性に聴きたくなってしまったので借りた。あの23分間に満ちる空気の素晴らしさ。。妻が「グーグーだって猫である」を借りて、僕は再見しようかと思って「崖の上のポニョ」も借りた。


ツタヤを出て、不忍池を散歩する。すさまじい暑さで、歩いていると背中一面に只ならぬ熱の照射を感じる。炎天下の空の下に、池の水面がまったく見えないほど濃厚な、緑の蓮の葉の平原が弁天さまのもっと向こうにまで広がっていて、ところどころにぽつぽつと、赤紫色の蓮の花が咲いている。きれい、とか、風情かある、とかいうよりは、夏の旺盛な生息欲を感じさせる光景。池沿いを歩きながら蓮見茶屋の入り口まで来たので、生ビールありましたっけ?と聞いたら申し訳ありませんアルコール類は昼間はお出ししてないんです午後5時からになりますといわれ、あぁそうすいません、とこたえてそのまま歩き続け、ボートを漕ぐ人たちやベンチに座って読書したり将棋を指している人たちを眺めながら、そのまま根津駅まで歩き、根津から千代田線に乗って帰った。


家で素麺を食べて、その後、北杜夫・斉藤由香の「パパは楽しい躁うつ病」という本を読んだ。ものすごく面白くて爆笑しながら、一気に読み終わってしまった。そのあと世界陸上のテレビで、100M競争のシーンが何度もやっているのを見ていて、抽象的なトラック上で人間の肉体のものすごい圧縮と開放が10秒以下で何度も反復されている事を強く感じた。いや本当に、100m走というのは、あれは人間が走る競争というのではなく、エンジンのベンチマークテストだと思う。やがて、50年後とかの未来のオリンピックでは、選手は皆、寝そべったままで配線をいっぱい身体につなぎ、スタートと同時に、あっという間に記録が集計され、何事もなくレースが終り、寝そべったままの選手の一人が突然歓喜してベッドから飛び起きて喜ぶだろう。


その後、CDを聴いたりしていてふと思いたって大江健三郎の「セブンティーン」を最初の3頁くらい読む。主人公の兄のことをふと思い出したから。あの兄はオーディオ好きの軽引きこもりみたいなヤツで、高音と低温を意図的に強調したハイ・ファイ・サウンドに夢中になっている、みたいな事が書いてあったのを確認する。なんとなく自分もいまそうなってるのか、と一瞬不安に思ったからかもしれないが。