上野で名宝、家でペ・ドゥナ


上野で「皇室の名宝―日本美の華」に。大変な混雑。若冲の部屋は普通に観るのはちょっと無理な感じ。どの絵も上半分しか見えなかった。本館 特別1・2室の特集陳列、中国書画精華の作品群を観れたのがすごく良かった。何しろ13世紀とか書いてあるだけですごいと思ってしまう。13世紀ってことばの意味をちゃんとイメージできない!というか古墳時代なら5世紀とか6世紀である。でも甲冑とかがある!馬や猿をかたどった焼き物もあるのだ。5世紀の人々も甲冑を付けて馬に乗って戦争していたのだろう。やっぱり人間は今も昔も戦争しかないのだろうか。


昼食ではじめて黒船亭に行った。なかなか良かった。でもやや食べ過ぎて、満腹したらぐったりした。妻はふいに激しい眠気に襲われた。ツタヤに寄って「ほえる犬は噛まない」「子猫をお願い」「ダーク・ナイト」「ホウシャオシェンのレッドバルーン」を借りた。前2本は、どちらも昔一度観てるのだが、妻が今ペ・ドゥナ・ブームが来てる最中なので再見したいとのご要望で借りた。後2本は未見なので借りた。家に帰ってからペ・ドゥナ特集という事で続けて2本観る。どちらも昔一度観てるし、僕は別に、今ペ・ドゥナ・ブームとかではないので、観るのを途中でやめてもいいやと思っていたのだが「ほえる犬は噛まない」は薄らいでいる記憶の印象をはるかに超える面白さで、大変驚いた。これってこんなに面白かったっけ?と思った。一々書ききれないほど面白い。細かいところが全部面白いという感じ。脇役も素晴らしい人々ばかり。ドゥナの友達の文房具屋の娘の素晴らしさ!あとイ・ソンジェの奥さん役の人も超・すばらしい。「子猫をお願い」も良かった。登場人物それぞれの事情やそれぞれの立場の違いをわかりやすいところで混ぜ合わせず、それぞれ分離させたまま、荒々しい風景を背景にして一気に推し進めていく感じがすごく良かった。何よりも風景が素晴らしい。ジヨンが暮らす界隈は、貧しさが浮き彫りになっているような場所で、うつくしさと現実の厳しさがそのまま映り込んでいるように思えて、すごいと思った。ドゥナとジヨンが二人で歩きながら話すシーンとかも、真夜中の何か食品工場みたいなところで、人々が忙しげに働いているところのすぐ脇で二人しゃがんで話すのだが、なぜあんな場所でのシーンなのか、理由はわからないが、でもああいう場所での出来事なんだ、というのがすごく映画の説得力になっていると思った。しかしなんとも荒涼とした手触りが強くあって、2000年あたりの特有の空気だったかもなあ、と、特に何の根拠もないような事を思った。携帯電話の出方がすごく人々の断片化されたやり取りの感触をよくあらわしているように思った。むしろ今よりもこの映画に出てくるような一昔前っぽい携帯の方が、そういう荒涼の感触がよく出てるようにも思った。