しもやけ


今日、本を買ったとき、レジの書店員の若い男性の仕草とか言葉が、おそろしく弱々しい感じで、すべての所作が小刻みに震えているかのような感じで、品物とおつりを受取ったとき、商品の方たしかに無事受取りました。ご対応ありがとうございました。と思わず心の中で呟いてしまった。


その人の手はなぜか、酷く荒れていて、かわいそうだった。でも手の荒れている人にはたまに出会う。接客業でとくに水仕事の人は手がかなり酷いことになる人も少なくないだろう。書店員では珍しいのかもしれないが…。


世間で、手荒れという症状は今もまだ、いまでもあるけど、最近はしもやけ、というものはかなり、少なくなってきたのではないだろうか?僕は昔、子供の頃は、しもやけはおそらく、何度もなった事があると思うが、今の子供はしもやけになったりするのだろうか?足の小指が、ぷっくりと赤く空気で膨らんだように腫れ上がっているあの感じ。あれはもう、絶滅したのだろうか?


いや、おそらく体質とかもあるだろうから、いましもやけに苦しんでいる方もこの世界にはたくさんいらっしゃるだろう。その方々は大変お気の毒な事であり、一日も早いご回復を心よりお祈りいたしますが、しかし、今の生活において、しもやけするほど冷える環境に長時間いるという事はなかなかない。


ほんの数十年前なら、暖房なんか全く効いてない場所にずーっと何時間も居て、何かに集中していて、はっと気づくと、身体全体が凍りついたように冷たくかじかんでいるのに気づいたりとか、そういう事だってあったと思うが、今はそういう事がない。


焚き火の童謡にもあったように、しもやけの手を火にかざすと、むずがゆさが広がっていくあの感覚…。


そういえば、「焚き火」も、今はもう滅多にお目にかかれなくなった。焚き火の匂いは懐かしい。夕方から焚き火を始めて、火が消えた頃にはすっかり夜になっていて、暗い闇の中でまだ火種がくすぶっていて、その赤い輝きをいつまでも見ている。木の枝で火種を少し突っつくと、火の粉と煙を舞い上げながら白い炭と化した木片が崩れ落ちて中からまだ新鮮な炎の赤い断面がくっきりとした輪郭をあらわにする。それを見て「まだ焚き火は終わってない!」と思うのだ。