たましいのMIX


Heart Beat Presents Mixed By Derrick May(TRANSMAT from DETROIT)× Air(DAIKANYAMA TOKYO)


ジャンルとしてのハウスとかテクノとかミニマルとかダブとか、場としてのニューヨークとかロンドンとかベルリンとかシカゴとかデトロイトとか…そんなものがいつかすべて跡形もなく消え去り失われてしまう事があったとしても、たぶん「これ」は残るのではないか?これさえあれば、もうほとんどのものがいらないのかもしれない。もしかしたら、場合によってはもうジェフ・ミルズさえも、いらないのではないだろうか?…などと、ほんの一瞬だけとはいえ、そんな思いにすら駆られてしまうほど、とてつもなくエモーショナルな、ひとのこころを鷲づかみにして右に左に力任せにがんがん揺さぶりまくる、言葉の真なる意味で感情的な音楽だ。


再生ボタンを押した途端に、あっという間にもって行かれてしまい、胸の高鳴りに全身が震える思い。なぜこのような音楽を奏でられるのか?奏でる?単にターンテーブル2台とミキサーでMIXしてるだけだ。それだけなのになぜ、これほどまでに感情が溢れ出す様な瞬間が何度もあるのか?いったい、こんな音楽家がほかにいるだろうか?おそるべしDerrick May。とてつもない傑作。この音楽こそが「レコードの美学」という言葉にふさわしい。「これは少女の笑い声からはじまるミックスCD、これは一流のDJがコンピュータに頼らずに"生"でミックスした魂のCD」パッケージに被せられた野田努による帯メッセージだ。こんな紋切り型の言葉なのに、聴き終わってまさに「まったくその通りだ!」と全身で肯定するしかないような気分にさせられるCDである。