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もう三十九歳だぜ!?ひどいでしょ。自分で自分が信じられないよ!いつの間に自分がそんな年齢になってしまったんだって!そういう自覚が、正直まったくないんだよ!そんなんでいいのかね?どう思うよ!?


えー全然そういう風に見えないですって。全然大丈夫ですよ。まだ若いじゃないですかぁ、そんな悲観することないじゃないですか。


まじで!?そうかなあ、まだ大丈夫かなあ、いやマジで信じられないんだよ自分でも!なんで自分がそんな年齢になってしまったのかが!本当にそんな自覚ないから!もう勘弁してくれよって感じだから!


…って、自分の年齢をネタに愚痴みたいな感じでだらしなくベラベラ喋って、二十五歳くらいの人に適当にあしらわれる感じで慰めてもらって、かまってもらえて本気でちょっと嬉しくなって若干気を取り直して元気になれるっていう…完全な老害バカモードに入ってる自分がなさけない。俺なんかもう、まじでとっとと死んだほうが世のためではないか。っていうかなんで最近の若い子はみんなしっかりしてるんだろうか。若い子でこりゃ当時の自分以下だな、と思えたような人に今まで一度も出会った事がない。


ふつうに野菜の値段とか何となくわかってるよ。ネギとか三本で百九十八円くらいとかだよ。えうそまじそれって高い?ちなみにもう俺とか近所のスーパーの食品売り場のどこに何があるのかもう大体わかってるし。


入り口を入って手前から奥にかけて野菜とか豆腐とかがあって、その向こうに鮮魚コーナーがあって、そこから反対側の奥にかけて肉製品で、牛豚鶏の順番で並んでいて、フロア中央に並んでいる棚は缶詰とか調味料とか飲料とか酒とか菓子類で、反対奥から手前にかけては乳製品とか惣菜とかパン類とかだったと思う。全体としてはそういうかんじで、レジは五つくらい並んでるかんじ。あんまり混んでない。夕方とかはまあまあ混むかも。若いやつとオバサンとお婆さんがいつもいるレジ係。自分は買うものとかもほぼ決まってるし、そうなると店内の巡り順さえ大体決まってしまうんで、時間もせいぜい十分とか。


さっさと買い物して会計して店を出る。歩道を子供たちの自転車が三列くらいでこっちに向かってくるので、車道を歩いて除ける。向かいの家の犬が寝そべってだるそうな目でこっちを見ているので、いつもどおりこっちも睨みかえす。いつもいるトラックが音を鳴らしながらバックしますご注意下さいバックしますご注意下さいと云いながら建物の中に入ろうとしてる。


スーパーで買い物してると「新参者」はすぐわかる。最近このあたりに引っ越してきたばかりっぽい感じの若い女性とか。まだ店のレイアウトを把握してないから、動きに無駄が多い。あっち行ったりこっち行ったりしている。あと服装がほかとちょっと違う。微妙に小奇麗だったりしてる。もっと適当で大丈夫、っていう判断がまだ出来てない感が漂ってる。


でも若いって素晴らしい。


あぁもっとこざっぱりしたおとこになりたい。