眠り(VUILLARD)


かわいた喉下を、むなしく通り過ぎた

炭酸水の宙ぶらりんな刺激の

干からびたままの口の中の

舌の先に付着した髪の毛一本の

人差し指で貼り付けたティッシュの表面の

指の表面がささくれ立つ繊維の

あらあらしい摩擦の

冷え切った室内の

通り過ぎたあとのかすかな砂塵の立上りを、すかさず

息で吸って匂いごと呑みこんだときの

乾きとうるおいの、交互の

どちらともつかぬ行き来の、その気配が広がりゆき

闇のとばりのそこかしこに刺しはさまるかすかな

ふたりのどちらでもない領域におぼえる冷えた痛みの

まどろみの、つかれの匂いを嗅ぎ

まぶたから目尻にかけて

涙の乾いたあとの

突っ張った肌に貼り付いた睫毛の

頬のかかる髪の毛の、枕にもたげた頭の重みの

意識のうしないをみとめ、そっと腕を外して、

ささやかなねむりをその場に、おきざりにしたあとの