スイッチ


部屋から出るときは、いくつかのスイッチを切る。


まず左下にあるスイッチを切る。シャットダウンが開始されるので、その間に残りのスイッチも切る。


スイッチは合計四つ。そのうちふたつは、椅子から立ち上がらないと手が届かない。もうふたつは機械の裏に手を伸ばして消す。


まず立ち上がって右手で消す。また座って元の姿勢のまま身体を前にして手を伸ばして機械の裏にあるスイッチを下に押し下げる。もう片方の手でもう一個の機械のわき腹の向こうにあるスイッチも消す。


それで立ち上がってドアの脇にある最後のスイッチを消す。すると、それでようやく部屋が真暗になる。その暗さを見て、全部が正しくOFFにされた事を知る。


真っ暗になった部屋のカーテンの隙間から、夜空の外灯でかすかに照らされた青さがほんの少しだけ窓の向こう側の色としてみえる。夜空の方が部屋よりも明るい。部屋の中はどんよりとした暗黒の中、機械のLEDが小さくいくつか光っているだけだ。


こうして、ドアを開けて部屋を出た後も、そのあと部屋は真暗なまま、何もおこらない。もう今までも、ずっとそうだったはず。あと二時間か三時間で完全に朝になる。それまでは何も怒らず、何かが動く気配もない。


朝起きたら妻が怒っている。水道の水が出しっ放しで、じゃーじゃーと水が出ていたそうだ。