Footsteps In The Dark


階段を昇る。ステップを交互に、しばらくして、途中で立ち止まって、ここでしばらく休むか、さらに上に昇るか、突き当りまで歩くか、この場で振り返って、奥に広がっているスペースの突き当たりまで進むか、どちらでも良い。左側の、突き出した部分に腰掛けることもできるようだ。腰掛けるなら、手提げ鞄はすぐ脇のフックに引っ掛けられる。ここは通路でもあるし小休止のスペースでもある。兼用空間として構成されているから、階段の途中でありながら、我々のニーズに合わせた、多様なアプローチが可能だ。飲み物を受け取ることもできるし、軽食もある。アルコールもOKだ。喫煙もできるのではなかろうか。グラスを手にしたまま、さらに階段を昇って上のフロアに行く事もできる。もちろん背後に広がっている広大なスペースの突き当たりまで、ふらふらと歩いてもかまわない。階段を昇って、立ち止まって、また少し昇って、立ち止まって、そうやって、独りきりの時間をゆったりと過ごしている勤め帰りのサラリーマンを最近はよく見かけるようになった。かなり長く立ち止まって、後ろ向きのままゆっくりと足を下ろして、後ずさりで器用に階段を降りて行く人も多い。皆が思い思いに、こうして階段を上り下りするようになったのは、つい最近のことだ。階段が、通勤客にとってすごく親しみやすく快適で便利なものになったことの証だろう。昇りたいときに昇って、休みたいときにいつでもすぐ休める、それが可能になったことが大きいのだと思う。いつでもどこでも、階段の途中で思う存分、ブレイクできるのだ。さらに上に行くも良し。ここでしばらく休むか、さらに上に昇るか、突き当りまで歩くか、もちろんこの場で振り返って、奥に広がっている真っ暗なスペースのさらに先まで進むのも良し。