迅速に逃げ支度をしてオフィスを退去。このあとの食事の格好を整える。目星の目をつけて置いた、いくつかの店先に電話する。近場は巡る。人影はまばらで、街並みは死滅しているにも関わらず、予約状況は盛況で、どの店も塞がっている。金曜日の夜らしい。華やかな喧騒に包まれている。むかついて電話応対の後を邪険にしてぶっきらぼうに切る。ダメな店はスルーで、まさに今、金曜のよるだというのに、なぜか、空席がほとんどで、しかしあと三十分後には、客入りだけなら、次の瞬間にはどうなってるかわからないような、そういう店があれば、そそくさ入店する。一人でもいいですかね?どうぞどうぞ。これって、生牡蠣ですか?じゃあこれ。これ下さい。牡蠣を食う。食いながら、少しずつ客が店内に埋まり始めるのを、ぼやっとみている。店員の声の調子を聴くともなく聴いている。「お前、どう思ってんだよ。」「今期の選挙出ないのかよ?」「来期でもその次でもいいけど、じっさいやる気ないのかよ?どうなのよ?」よし、やってやろうじゃないか、という気になる。ついに決意した。立候補だ。