前の日に早く寝てしまったので、朝の4時半くらいに起きて、ブログを書いたあと、Los Lobosの「Kiko」を聴いて、あまりの素晴らしさに、かなり元気になる。


ミッチェル・フルームという人の仕事の素晴らしさ。なぜ、これを思いついたのか。音の位相空間の、すべてがちょっと歪んだ感じ。現実ではありえない聴こえ方が仕組まれている。しかしもともと、録音されて、ミキシングされた音というのが、現実ではないというか、異なる現実の組み合わせ(ミックス)ということなのだが、これは、そのことをあらためて思い出させてくれる。…って、Los Lobosは、名盤の誉れ高き96年のColossal Headも発売当時から聴いてるし、ラテン・プレイボーイズも聴いているので、そんなことは理屈では知ってはいたのだが、でもやはりこうして聴いて、はっきり聴こえてくるものを知ると、それまでは何も聴いてなかったのだということがわかるというものなのだ。とりあえず今は「Kiko」だけで充分に満ち足りた思いにさせられる。


ボーカルの、素晴らしさ。少し甘えたような、愛嬌がありながら淡白で、歯切れのよい、飄々としていて、各フレーズごとの言葉の切レかたが、ムチャクチャカッコいい。


エレキギター、という楽器の素晴らしさ。ホーンが鳴っているのかと思うような、深く歪みリバーヴかかったトーン。渋く慎ましくもファンキーなカッティング。重々しいのに躍動的に刻まれるリズム。しかしぜんたいの感じはふわふわ。モヤがかかったかのように茫漠としている。


すごい異化効果。ほんとうにすぐれた仕事。すべての行為が異常な精度で感受されてしまう。


Wicked Rainこれカッコよすぎて、死ぬ。ああ、おれも歌とギターがうまければ、きっとこうして歌って暮らしたことだろうなあ。あー、なんてかっこいいんでしょう。。


ヴィスコンティ地獄に堕ちた勇者ども」をDVDで観る。すごい。見ごたえ充分。テーブルをみんなで囲んで食事してるシーンだけでもすごい迫力。ナチス突撃隊のグダグダといつまでも続く乱痴気パーティーが素晴らしい。これが、イタリア映画の脈々と息づく伝統というか、系譜的なものなんでしょうか。たとえ翌朝、殺されるのだとしても、あんな一夜なら、さぞ楽しかろう。最後の、マルティンが黒服を着てからの、結婚式の直前のなぜかグタグタした雰囲気も、たいへんいい感じ。いやでも今更だけど、ナチスの制服って、ほんとうにかっこいいものですね。こんないい天気の日に、午前中からカーテンを閉めて鑑賞するのにふさわしい。


テレンス・マリック天国の日々」をDVDで観る。すごい。なんというカメラ。西日の世界だけで成立した世界。また、この何ともとりつくしまのない、淡々とした、何も止めようが無い時間の流れの感じというか、ただひたすら流れ去っていく時間の流出のだらしなさというか、ぜいたくさというか、とにかくものすごく、言葉のほんとうに良い意味でしまりのない、なんともいい感じ。麦畑も突っ立っている一軒家も蒸気機関の農耕車もなにもかも素晴らしい。終わり方もすごくいい。