僕とは初対面のはずだ。しかしフロアですれ違ったりすることも多いから、おそらくそれが、今ここにいる僕だということだけは、前から知っていただろう。はじめて話をしてみて、あれ、この人もしかしたら、少しばかなのかな?と感じた。どうも、思っていた感じと違った。僕の声も表情も、話も、そこではじめて、あたらしく知ったから。どうも、思ってたのと、全然違った。ふと引っ込んだり、また出てきたりする。あ、思ったよりも少し違う。少し、ばかかもしれない。そう思った。初めて話すとき、たいていはそうで、おそらく同じように、相手からもそう思われている。初対面だとそれが普通の可能性もある、とか、そんな風に考えるタイプの人間なのかもしれない。


酒のせいで、すぐに打ち解けた。するとたちまち、かしこくなってしまった。聡くあれ。そう命令されたかのように、僕がそう変わったと感じた。思ったよりもすぐに、最初の印象は消えてしまった。消えたと知ったときに、貴重な一瞬がなくなったと思ったかもしれない。それも今までに何度も感じたことのある感覚だったかもしれない。