横光利一の「旅愁」。分厚い文庫本が上下二冊で、今上巻の三分の二くらいまで進んだけど、やはり印象としては横光「上海」とも似た、いいご身分の高等遊民みたいな人たちが、パリで毎晩遊びながらさして重大とも深遠とも思えないようなことをひたすら議論しながら悩むというもので、そんな本を読んでて面白いのか?と聞かれたら、いや、それがなぜか、けっこう面白いんですよ、と、答えるしかない感じである。まあ、なにしろ長いので、このまま読み続けるかどうかは不明だが、しかし今日ついに、日華事変が勃発していよいよ緊張感が出てきたと思ったけど、中華屋で中国人の客と一瞬険悪な雰囲気になったくらいで、あとはやっぱり、どうでもいいようなことをふらふらと考えながら、ダラダラと酒を飲んで遊んでいるだけで、なんか、すごいよくわかるというか、うらやましいというか、ですよね、たしかに、もしそういうことになっても、こういう感じだと思うよ、書いてあることは大体、浅はかでつまらないのだけど、でもなぜか、やっぱりこういうもんかもしれないなあ、そうだろうなあ…と、実にわかりやすく、ある意味こころから共感できるのであった。というか、1937年でしょ。なんとなく、そんな昔のことじゃない、そんな感じである。