つくばエクスプレスで、つくばへ。


そういえば、中二の頃、つくばで開催されたEXPO85に行ったことがあったのを、いきなり思い出した。駅を出て、中央公園から筑波学院大学を経て、ゆりのき通りと名付けられた落葉で黄色く染まった銀杏並木の道を歩きながら、筑波大学のキャンパス内を見渡しながら、もしかするとまさにこの場所が、当時EXPO85が開催されていた会場跡なのではないかと思って、一瞬気が遠くなったが、これを書いている今調べてみると、そうではなくて、会場の最寄り駅は現在のつくばエクスプレスでいえば万博記念公園研究学園駅がもっとも近く、その跡地の形状は当時の資料を見れば今でもはっきりと確認できる。しかし、つくばエクスプレスがない時代にどうやってつくばまで来たのか、その記憶は完全にない。たしか、当時仲のよかったM君と僕と二人で、埼玉から早朝出発して、ひたすら電車に乗ってつくばまで来たのだと思うが、とにかく遠かったという記憶だけがかすかに残っているだけで、EXPO85そのものの記憶はほとんどない。ただし富士通パビリオンに行きたくて、そこに行ったということだけはかすかにおぼえている。でもそれが、どういう内容だったのかは、まったく覚えていない。



で、今日つくばに来た理由は別に何もなくて、筑波大学の広大なキャンパスと筑波実験植物園を散歩するために来ただけ。


筑波大学はすごい。都内では考えられないような広さのキャンパスで、それはほとんどある一施設の敷地であることを忘れさせるほどだが、そこを歩いていると、たまに、並んで歩いてる人、車に乗ってる人、自転車に乗ってる人、コンビニにいる人、図書館や研究施設から出てくる人、などがいて、そういう人々とすれ違ったり行き交ったりしながら、さらに歩いていくと、たくさんの学生宿舎があって、やはりそのあたりから歩いてくる人、待ち合わせしてる人、バスを待つ人、などがいて、さらにいくと、今度は陸上競技用のトラックや野球場や体育館や武道館などがあらわれ、体育館の脇を歩いて通り過ぎるときは、館内でボールを床にバシバシと叩きつけてシューズの靴底をキュッといわせて何かの球技をしている音が遠くに反響するような音で聴こえてくるし、野球場にはユニホームを来てかったるそうに声を出してる野球部員がいるし、陸上競技場のトラックにはすごいスピードで身体を斜め内側に傾けながらコーナーを走り去っていく人がいて、さらにその先の森の茂みからは、誰か一人か二人かが管弦楽奏の練習をしていて、さっきから何度も同じフレーズがくりかえされているのが聴こえてくる。


何しろ、広大な敷地なので、人はまばらにしか存在せず、広々とした地平に、紅葉したイチョウの葉が風にひらひらと舞い、ところどころ、イロハモミジの異様な赤が空に混ざり合おうとして冷たく跳ね返されてその色とかたちを中空に凝固させており、ほとんど侘しささえ感じさせるほどの閑散とした景色であるにも関わらず、大学は、花ざかり。誰もが勉強に運動に音楽に懸命で、ベンチに座って雑談している男女ですら、今このときに懸命であるようで、大学って、いつもこんなんか。みんな、受け狙いのギャグのように、何かの間違いであるかのように、一瞬の幻想であるかのように、今、勉強したり運動したり音楽を奏でたり、お喋りしたりコーヒーのんだりバスに乗ったりしている。なんだか皆、異様に一生懸命、何かしているようなのだ。


なんか、これこそEXPOだ。すごいな。つくば。お墓か。これは。一時間以上かけて歩いて、ようやく筑波実験植物園に着く。ここは都内の植物園のなかでも最も研究施設的な感じで、なにしろほぼすべての樹木にキャプションが付いている。QRコードまで付いているのだ。温室はサバンナ地方、熱帯雨林地方、その他の地方でちゃんと分かれている。施設内全域、地区ごとに樹木の種別がしっかりと分類されていて、植物の研究にはきわめて快適で利便的だが、場所としては強烈に人工的で、ここはかつて森林だったとはまったく思えず、少なくとも紅葉と楽しみましょうという場所ではない。紅葉している樹木も勿論あるけど、最素からキレイな景観を演出しようという気がゼロなので、それはそれで面白い。


結局3、4時間歩き続けて、帰った。結局、いまここに来て、風邪を引いてないと自分は信じているが、鼻、喉に違和感を自覚している件を認めざるを得ない。