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僕にとって懐かしい曲は、もしかしたら僕だけが懐かしくて、他は誰もそう思ってないような曲なのでは、という思いが、そんなはずはないのに、常にある。90年代に限らず、いつの時代でもだ。昔から、ある曲を懐かしいというとき、その感覚を人と共有できるなんて想像もしてない。90年代だから、90年代を通過した人々が皆懐かしがるだなんてまったく思わない。そういう意味での時代生みたいなものは、僕は理解する力がない。90年代は、いつでも僕だけの90年代でしかない。…でも、なんでこんなことを書いているのかというと、いまapple musicのプレイリスト「R&B 97年」を聴いているから。もう、あの日の自分が何遍でもよみがえってくるという感じなのだが、でもそれはやはり、共有できるというものではない。そう思いたいと思う。この曲のすべてを僕以外の誰もが聴いたこともないというのが現実だと思いたい。そしてそれはある意味事実、ある意味事実ではない。つまりどちらでもない。僕が勝手に見ている夢のようなものだ。