Spaceship Coupe


秋葉原を出て、夜を歩く。夜。その黒さ、暗さ、暗味。暗味?


身体の内側にまで、それが染み込んでくるのを感じる。


湿った色。脱水したばかり、その少し生乾きの色。


今、Justin TimberlakeのSpaceship Coupeです。


…すいませんね。そう、一応毎日、活動量を稼ぐ必要があるので、少し歩くんですけどね。


だから昭和通りを、ずっと歩いて、左へそれた。bistroなんとかが、ビルの二階できらきら光ってる。ガラス越しに楽しげな人影がぽつぽつと並んでいる。どうなのかね。あの店。たぶん大したことないと思うよ。行ったら、きっとがっかりするよ。


やや光が翳って、大手独立系エスアイヤーのでかいロゴがぼやっと怪しく光ってるビルの脇を抜けて、それで中央通りの明るさの中へ戻ってくる。


車の通りも少なくなった白い路面。静かな冬。途中でふっと香りがした。おっ、と思って振り返ったら、朽ちかけた鉄柵の内側にゴミ箱があって古い自転車があって、その脇に赤い梅が一本だけいた。咲き始めてからの、ほんのひと時だけ香るのかね?先日、板橋で蝋梅がたくさん咲いてたけれども、ちっとも香りはしなかった。あんなふうに盛大に咲ききってしまうと、かえって香りは出さないのかね?