切子


図書館で本を返した。


人生の三分の一は寝ていて、もう三分の一は映画見たり本読んだり音楽聴いたり、テレビ見たりゲームしたり、残りは仕事してるのかな。あと、ごはん食べたり。家族や身内と共に生活している。一人暮らししてる人も、誰かと出会ったり、電話したりメールしたりしている。ぼんやり、考え事をしてる。だから、これらのどれも、現実ではないのだし、もっと非現実を続けていいはずなのね。さいきんどうも平日になると、昨日までのことと今とがブツ切れになりがちな気がする。もっと連続したいのだが…。


妻が送別の席でもらってきた切子ガラスの猪口がすごくきれい。酒を飲む器で、切子グラスが家にあるといいかもと前から思っていたのだが、高いし、買ってもどうせすぐ割るだろうし、まあいいかと思っていたのだが、やはりいいね。けっこう重みがあって、指の腹にしっとりと冷たく密着するガラスという物質の、厚みそのものに質感が感じられて、口内に運ぶ直前まで、中の液体をより研ぎ澄ませて送り届けてくれているような感じがするのだ。洗うのは恐いが、ワイングラスだって最近割ってないし、まあ大丈夫でしょう。あと贈り物はもう一つあって、あの超有名な、というかけっこうお高い吟醸酒が冷蔵庫にあって、うわすげえと思った。ていうか、最後の贈り物でこういうのをもらってくるあたり、酒好きが職場にバレ過ぎでしょと思うのだが、それでも結果的にはお手柄と言えよう。


たしかにこれは、美味しいですね。僕はでも、吟醸酒とか華やかな味わいの日本酒は、じつはふだんあまり好まないというか、もっと半値以下の辛口の本醸造酒の方がよっぽどいいじゃんとか思うのだが、でもこれはさすがに世間で話題になるだけのことはありますね。でものみやすいね。キチガイ水の輝き。注がれて注がれて、たちまちこの世から消えてしまった。


今朝見た夢。停車中のバスに乗っていると、車内アナウンスが流れる。何か変な、意味のわからない内容だったので、変だなと思っていると、どうもそれは、赤羽近辺のバス車内で流れる音声が、間違ってこのバス内に流れてしまったらしいということがわかる。なんだ、そんなことがあるのかと思っていると、運転手らしき人がバスに乗り込んできて、やけにはっきりした声で車内に向かって言う。


「ですね、では、そのようにしましょう。」


その直後、何か妙に嫌な予感がする。只ならぬ不安をおぼえる。思い切って決断する。立ち上がって下車した。外に出て、バスを見ていたら、扉が閉まって、バスが発車した。そのまま側壁に車体を擦りつけながら、前方の壁に衝突した。ゆっくりとバックして、また前進して、ふたたび壁に衝突した。側壁と車体の間に隙間が無いので、乗客は誰も降りられないはずだ。最悪だと思った。というか、もしかしたら、まだ妻がバスの中にいるんじゃなかっただろうかと思ってかなり焦る。


しばらくして、方向転換したバスが、僕の方に向き直って、そのまま近づいてきた。明らかに、僕に向かって来ていた。あ、どうしようと思う。右か左に逃げればいいのか、後ろへ走って逃げるか、どうしよう。隠れるいい場所があれば、それですぐに安全になる。でも何もなかったら、ひょっとするとこのまま逃げられないとしたら、最悪だ。モロに衝突されたら、それで死んでしまうのだろうか。でも、まだ何とか逃げられるんじゃないかと思っている。