cetaceans of the world


もう一週間以上前だが、科学博物館に行ったときに、前からほしいと思っていたクジラのポスターを物販コーナーで買った。クジラを横から見たイラスト図で、類毎に、大きいものから小さなものまで、サイズの比較がしやすいように並べて描かれているものである。いちばん巨大なシロナガスクジラが画面最上位に描かれていて、その下にザトウクジラ、セミクジラがそれぞれ半分くらいの大きさで描かれていて、マッコウクジラとか、さらにサイズが小さくなるとシャチとかイルカとかもいる。真っ白の背景に、色はどれもほぼ暗青黒系のクジラ各個体の紡錘形のかたちが、大小様々にいくつもくりかえされているような図版である。("cetaceans of the world"で画像検索すると、似たような画像がいっぱい出てくる。)


このポスターはたぶん科学博物館が昔から販売しているものだと思うのだが、僕はこれをはじめて見たのはいつだったか忘れたけれど、そのとき以来、これを見ていると、とにかく忘我状態になってしまうというか、クジラという生き物の、その巨大さというか、その計り知れなさを想像しただけで、もうその図柄から目が離せなくなってしまう。


とくにセミクジラの口の曲がり方とか、ほとんど鳥肌が立つ思いだ。マッコウクジラの頭部に無数に残る傷跡の恐ろしさ。図柄の、クジラとクジラの間に存在する「地」の白さの中に、異常に小さな自分の姿を想像して、そのサイズが真上のシロナガスクジラの尾ひれの半分にも満たないだろうと想像して、それが自分とクジラ以外に何も存在しない深海の只中であることを想像しただけで、調子のいいときだと、たぶん気が狂う一歩手前くらいまで跳べるような気さえする。


で、ポスターは家に貼って、と言ってももはや全紙サイズを掛けられるような壁は我が家に無いので、フレームに入れて立て掛けるみたいな、それでさえ邪魔だが仕方が無い。あと、ポスターと同様の図柄がプリントされているA4のクリアケースも販売していて、これは会社の自分のデスク前のパーテーションに貼っておくため、ポスターと同時に購入した。あと絵葉書も。いや違った絵葉書はサメだった。まあ図版的には似たようなもの。


それで先日の会社で、さっそくクリアファイルをパーテーションに貼り付けておいたら、後ろを通りかかった女性から、クジラ好きなんですか?と聞かれたので、うーん、好きというのとはちょっと違いますけど、でもたまに、じーっと見てるのは好きなんですよ、と答える。


クジラ見てると癒されるとか、そういうことですか?と、さらに聞かれたので、うーん、癒されるというのとは、ちょっと違うんですよ、なんて言ったら良いのか、すぐ思い浮かばないのですが、…そうですねえ、見てると一瞬、気を失いそうになるような、そんな感じなんですよねえ、と答えたら、えー!?それはかなり、やばそうですねえと、やや引かれた。