ファントム・スレッド

Amazon Primeで、ポール・トーマス・アンダーソンファントム・スレッド」(2017年)を観る。50年代のロンドンで、貴族やお金持ちのドレスをつくるファッションデザイナーがダニエル・デイ=ルイスで、経営者の姉がレスリー・マンヴィル、その工房兼住居へ恋人としてやってくるのがヴィッキー・クリープスである。俳優二人の演技が見事というか、いかにも立派で、そういう見応えはある。しかしヴィッキー・クリープスという女性は、このあと数年くらいで、あっという間に大御所の名女優とかそんな立位置にすっとおさまってしまいそうな感じがするけどどうか…。

興味深かったのは、この当時のイギリスの商売組織の感じというか、超神経質で芸術家肌のデザイナーと、経営の手綱をしっかり握ってそうなお姉さんがいて、真っ白な作業着を着た頼りになるベテランの工員(縫子?針子?)の女性たちがいて、それらの人々と仕事場全体が醸し出してる、なんとなく日本の商家を思い出すような、職人たちが支えている工房の雰囲気。常連のお客様は、どの女性も皆すごいお金持ちか貴族か王族のような人達で、ドレスはすべて完全に手製のオーダーメイドで、ひと昔もふた昔も前の豪奢さの感じが見ていて楽しい。

お姉さん役のレスリー・マンヴィルが良かった。うつむいて上目遣いで黙ってるダニエル・デイ=ルイスは、ほとんど田村正和みたいだった。