「Word of Mouth」Jaco Pastorius


Word of Mouth


ジャコパストリアスが、実はコンポーザーとしての能力も非常に高く、ストレートなジャズからロックやカリビアサウンドまでをも包括する幅広い音楽ジャンルを自分のサウンドとして現す能力にも長けた、有能なミュージシャンであったなどという話はしゃらくさいというか、今の僕にとってはどうでも良い事で、とにかくジャコがすごい理由は、ベースを弾き倒す事をおいて他に無いというか、ジャコパストリアスの手に掛かると、エレキ・ベースというのは、そのような音が出るんですね!?という事を教えてくれる意味においてすごいのであり、そのフレーズはまるで、小さな声で囁くような感じですね。そのアタックはまるで、獣のいななきのようですね。そのファズエフェクトはまるで、怒りに任せたなりふり構わぬ感情の迸りのようにも感じられますね。ところでそれ楽器としてはバイオリンでもギターでもなくて所謂普通のエレキベースですけど使い方間違ってませんか?という、そんな避けがたく漂う滑稽さと、感動的なものすごさの背中合わせの中で、なおも無理矢理強引に、この野太い音がする楽器だけで突き抜けてしまおうとする闇雲な意志のちからにおいて、すごいのです!そもそも、挑戦の手段として、最初から間違っているのではないか?という不安定さを丸ごと抱え込んで、そのまま誰も到達できない場所にまで行ってしまったミュージシャンがジャコパストリアスです。


そもそもジミヘンドリクスが、ギターとアンプのボリュームを「いや普通そこまで上げませんよ。そんなことしたら壊れますよ」というところまで上げてみて、ものすごいハウリングがあたりに充満し始めた時点で、「どうも間違ってはいないか?これって何なの?こんな状態って、ただ滑稽なのではないか??」と誰もが一抹の不安を感じながらも、とにかく、その高揚感らしきものに賭けてみたのが、事の始まりなのであって、ジャコの素晴らしき冒険もこの系譜に連なるものであった。無理矢理の滑稽さは、発明の母かもしれぬ。