「Sensuous」Cornelius


Sensuous


金曜の夜で、色々やることがあるのに、再生を始めたら、もうなにも出来なくなってしまった。風鈴の音が深く響き、静謐な音の空間が広がっていき、アコースティックギターが爪弾かれ始める。再生開始から20秒で、このアルバムは予想以上のブツだと確信する。妻は横で、下を向いて新聞を読んでいるが、多分、今この瞬間、間違いなく字面を目で追う事をやめ、たった今始まった音の異様な緊張感に耳をすませているはず。


ボクはスピーカーの前に胡坐をかいてじっとしている。まるで大昔の、何百万円もかけた再生装置の前で真剣にクラシックのレコードを掛けてるオッサンみたい(笑)…でも仕方が無い。そのような、一音も聞き漏らさないような必死さで、細心の注意を払わざるを得ないようなサウンドが、今、再生され始めてしまった。じっとしてそのまま音に向かう。なるべく余計な音を立てないように気を付けて…。妻が低く「いいねー」と呟く。思わずボクもかなり間抜けな声で「うーんやっぱこの人はすごいねー」とか返答する。


予想をはるかに超えて、コーネリアスの新作はとてつもなく素晴らしかった。自分で、わざわざblogとか書いていて、で、すごい良い音楽聴いたんだから、精一杯その「良さ」を言葉で解説して然るべきなんだろうけど、正直無理。絶対無理と思う。っていうか、逆にご教示頂きたいくらい。なぜ!ボクは、このコーネリアスの新作を、これほどまでに良いと感じているのだろう??これのどこが、そんなに素晴らしいというのか??説明不可能。とにかく圧倒的。まあ今日は少なくとも判断停止状態だ。明日になったら「何度か聴いたらさほどでも無くて、すぱっと飽きました」とかいう可能性も0%じゃないけど(笑)まあ多分、それはなさそう。。とにかくアルバム内に集積されてきたすべての音ひとつひとつが、脈打つ「生き物」のようだ。


中盤を過ぎて、今回のアルバムも前作pointの延長にあるという事が茫洋と掴めて来て、まあ聴きながら少しだけモノを考えるゆとりが出て来るので、いろいろと思うのだが、良さ!で言うと、新作sensuousは、pointを遥かに越えて良いと思う。もう、ボクにとって00年代半ばを代表するサウンドになってしまうかもしれない程、すさまじく良い。


無理やり短所を言えば、中盤の攻撃的な曲が、前半15分のすさまじいクオリティと吊りあってないかも。あと全体的に、高尚で難解なムードがやや強いかも。カジュアル度だけは前作に軍配か。…とはいえ、今は冷静にどうこう言えない感じ。あとで、再度ヘッドフォンで聴いてみます。