開脚しながら宙に浮く子


知人Bが自転車で通勤の途中に、脇の路地から飛び込んできたバイクとぶつかりそうになったのだそうだ。いきなりバイクが視界に現れて、とっさに全力でブレーキングしている瞬間、時はものすごくゆっくりと流れ、その間、なぜか遥か昔の、Bがまだ小学生くらいの頃の、記憶の中のある情景が浮かんでいたそうだ。Bの日記より引用する

ある時、友人数人でチャリでどこかへ行こうとし、4車線ある国道を横切った!
決して、交通量は少なくない!
半分渡りきった時、事件は起きた!!
先頭で渡っていたやつが、バイクにおもっきりはねられた!
( ̄0 ̄;

彼は宙に浮いていた!
大開脚しながら浮いていた!!
2m近くは浮いていた!!!

そのまま、アスファルトセントーン!!(プロレス技!)
( ▽|||)サー
開いた口は塞ぐことは出来なかった。。。

しばらくして、ケツを押えながら起き上がった!
C=(^◇^ ; ホッ!
どうやら、大事には至らなかったが、ケツへのダメージは大きかったようだ・・・


…という、そんな瞬間を一瞬のうちに思い出していたそうな。。で、その知人Bとバイクとの危機的状況は結果的に距離50cmのぎりぎりセーフで接触を避けられらしいのだが、自分はこれを読んだとき不思議なくらいツボに入ってしまい、たぶん5分くらい笑い続けた。何が笑えたのかというと、「国道で、バイクに跳ねられて大開脚しながら2m近くは浮いている小学生」のイメージにである。これがもう死ぬほどツボった。なんで?というくらい笑った。


しかしこのエピソードでハネられた小学生というのは、Bからよくよく聞いたら、僕もよく知ってるお互い共通の友人Fだという事なのだった。その名前を聞いて、え?Fの事なの??と思った途端「あ!」っと驚愕するくらい、古い記憶の塊が一挙に意識に浮かび上がってきた。制御不能なほどの力で記憶の逆流が起き、小学生時代の音や映像や感触がリアルに溢れるのを30秒くらい感じた。で同時に、国道を渡ろうとしていた自転車の小学生4人のメンバーには、他でもないこの僕自身も含まれてたという事や、しかも僕はその瞬間、前から2番目を走っていて、跳ねられたヤツの宙に浮かぶ有様をもっとも近くで目撃していたという事を、溢れる記憶イメージの中からようやく思い出した!


…あのときの、視界脇から突如として現われたバイク。プラスチックが割れるような乾いた接触音と共に奪い去られるようにバイクの進行方向に吹っ飛んだ自転車。宙に浮んで遊泳しているかのような友人。。終いにはその跳ねられた友人が穿いていた青いジーンズの、やや白っ茶けたケツの丸みの感じまでが、相当リアルに思い出されて来た。そのケツがぐるんと一回転して、アスファルトにどす!と落ちたのだ。それでそのあと、そいつは「ケツが痛てー」と顔を顰めていたのだ!!


アスファルトはいつも、人の体温のように生暖かい。んで、交通量が多いので行き交う車の走行するラインは車重で数cm、微妙になだらかに陥没しているのだ。で、そこに尻餅をついて顔をしかめる友人Fの苦しげな顔。。そんな瞬間の事までリアルに蘇ってきて…で、僕はなぜか再び、猛烈な勢いで押し寄せる抗いがたい笑いの中に引き摺り込まれた。