All Blues


Miles Davis QuintetのThe Complete Live at the Plugged Nickel1965 「All Blues」のウエイン・ショーターのパートでの、あまりにもヤバ過ぎる演奏。汚く、酷い。図々しくて、厚かましい。いけしゃあしゃあと、続ける。普通もう少しくらい遠慮ってものがあるだろ、そんな言葉など意にも介さず、ひたすら没入し、四肢を投げ出し、だらしなくふんぞり返って、品性に欠けた、素養も教養も最初から持ち合わせていないかのような、公共良俗に反したふてぶてしい態度。ウエイン・ショーターは普段は内気そうな地味な良さそうなヤツで、ちゃんと偉い人の顔色も窺っているくせに、この場に置いてはなんというとんでもない演奏であろうか。周囲などまるで意にも介さず、先生の声を振り切って、友達も恋人もおきざりにして、遥か彼方の、与えられたスペースに当然という顔で腰を下ろしている。なんの根拠も確証もなく実績もなくイメージも信仰も内なる自信も、全てないのに、その場で平然とはじめてしまう。しかも信じがたいことにいつまでも終わらない。最後まで行ききってしまう。このつつましい場所におさまっていた函の蓋を、もう二度と空ける事がなかったのかもしれないのに、一旦それを開けてしまえば、これほど傍若無人な、ほとんど内側から溢れ出てくる暴力それ自体のような出来事が出来してくる。これほどつつましいパッケージの一体どこから、あれほどの悪が湧き出てくるのか。