基底材の準備


カップ一杯の石膏を水で溶いて、そこに手早くジンクホワイトとジェル・メデイウムを加えてよくかき混ぜる。ボウルに半分ほどの量の、とろみのある真っ白な液体が固まらないよう常に攪拌しながら、床に置いた30センチ×45センチのシナベニヤ板の上に持ってきて器を少しずつ傾けていき、液体が白い筋になって、とろとろと下に落ちていってベニヤ板の表面に盛り上がってゆっくりと広がっていく。


続いて大きめのゴムベラを使って、板の真ん中へんに溜まった絵の具の白いかたまりを外側の方向へむけて手早く引き延ばしていく。塗りムラは気にせず、むしろムラを残すようにして、なるべく板全体に満遍なく、擦り目や凹凸の跡も残しつつ、総じてほぼ均一な厚みで絵の具が塗布された状態になるまで丹念にヘラを動かす。


石膏を含んだ絵の具の乾燥はあっという間で、すぐにヘラの動きが鈍くなってくる。あまり深追いせず、大体のところで終える。支持体がひとつ完成だ。同じものを今日は六枚作った。床に六枚の白い板を並べる。30センチ×45センチが六枚なので、展示するとしたら壁としては二メートルくらい必要だろう。そういうことは上手く行ってから考えれば良い話だが。とりあえず今日は夜まで作業中断だ。池袋にでも出てみるか。何か買い物の必要なものがなかっただろうか。これでまた調子に乗って出掛けてしまって、また下らないものを買って金を無駄にしないようにしなければ。


夜になったら、またここに戻ってきて、まずお湯を沸かす。六十度程度に温めたお湯をバケツに入れて、冷蔵庫から感光乳剤の入ったプラスティックのボトルを出してお湯に漬けて二十分待つ。そしたら暗幕を引いて塗布作業に入る。それと同時に前々日に準備しておいた乳剤塗布済みの、B1の木炭紙三枚の状態を確認する。もし良さそうで、その気になったら今日焼き付けしてみよう。失敗してもどうせ今日六枚追加するんだからいいだろう。また同じネガでいいから、とりあえず行こう。紙の方と板の方でやるべき事は全然違うはずなのだが、今はまだ何をどうすれば良いのか、はっきり決めなくても良いから、とにかくやってみて、その結果どうなるかに任せよう。